指定された待ち合わせ場所は、小田急線の「経堂」。
普段はあまり降り立つことのない街だからこそ、どんな夜が始まるのか期待に胸が高鳴る。
ドレスアップした私を迎えてくれた彼が案内してくれたのは、街灯の温かな光が灯る農大通りの一角。知る人ぞ知る、本気のお好み焼き屋だった。
ソースの香りに焦がされて。心掴まれる夜が、静かに幕を開ける——。
知る人ぞ知る「広島お好み焼き」の名店
賑やかな商店街の街頭をぬけ、年季の入ったビルの細い階段を上る。 靴音を響かせながら2階へ辿り着くと、そこには使い込まれた木製の引き戸と、静かに揺れる一枚の暖簾。
「え、お好み焼き……!?」
ドレスアップした自分の姿と、目の前の趣ある佇まいとのギャップに一瞬立ち尽くす私。 けれどここは、本場・広島の伝説的名店の流れを汲むお店。
彼がゆっくりとその重厚な扉を開けた瞬間、ふわりと溢れ出してきたのは、香ばしいソースと出汁が織りなす濃密な熱気と、そして温かな活気に一気にお腹と心を飲み込まれていく。
鉄板の熱気と、職人の手元が織りなすライブ感

ジュウッと音を立てて弾けるオイル、じっくりと蒸され立ち上る甘いキャベツの煙。 薄暗い店内の中で、目の前で繰り広げられるそのライブ感は、どんな高級フレンチの厨房よりもシネマティックで、美しかった。
「熱いから気をつけなよ」
差し出されたのは、表面がパリッと香ばしく焼き上げられた肉玉そば。ヘラを入れれば、半熟の卵がとろりと溢れ出し、焦がし醤油とソースの芳醇な香りで、すっかりどこか気取った私はいなくなっていました。
密室のバーでは見せられない、解きほぐされた素顔

圧倒的な匂いとビジュアルに我慢できずにハフハフと熱々を頬張ると、外はカリッ、中は出汁の効いた生地とキャベツの甘みが口いっぱいに広がる。
「……なにこれ、めちゃくちゃ美味しい。生ください。」
思わず声をあげて笑ってしまう。サイドメニューの「牛バラ焼」も美味しすぎて、思わずビールがすすむ。
高級店で背伸びするわけでもない。あえてこの情緒あふれる『八昌』を選び、極上の一皿へスマートにエスコートしてくれた彼のセンスに、完全に心を奪われていました。
ジョッキを傾けながら喜ぶ私の姿を見て、ポーカーフェイスだった彼の表情もふっと柔らかく解けたような気がした。密室のバーでは決して出せなかった素顔が、そこには確かにあった。
次の約束は、青空の下で
「次はオシャレな夜じゃなくて、ゴルフの帰りにお腹をペコペコに空かせて、本気で食べに来ない?」
ドレスアップした夜の濃密なギャップに心を掴まれたこそ、思わず飛び出す次の提案。
綺麗なドレスに身を包んで背伸びする夜もいいけれど、本当に彼の心を撃ち抜くのは、青空の下で泥臭くスイングし、ミスショットに悔しがり、ナイスショットに素顔で大はしゃぎする、そんな飾り気のない「素の私」だ。
「いいね、絶対行こう」と笑う彼の瞳に映るのは、もう気取った私じゃない。
大人の恋を一気に加速させるのは、完璧に演じ切ったシチュエーションなんかじゃない。 古き良き店の温かな情緒と、自分の素顔をすべて曝け出せる、最高に眩しい青空の約束だ。
「経堂 八昌」店舗情報
- 住所〒156-0052東京都世田谷区経堂1-21-18 原田ビル2F
- アクセス小田急小田原線「経堂駅」南口 徒歩1分
- 電話番号050-5493-0940
- 営業時間17:00~翌1:00(L.O. 23:30)
- 定休日月曜日、年末年始、8月中旬
- 席数17席
- 備考お子様連れOK(禁煙・喫煙および詳細は店舗へお問い合わせください)
Written by:MEDIA MAN.





