2021年のマスターズを制した松山英樹ですが、彼の凄さはそのマスターズの優勝さえも通過点と感じさせるほどの向上心です。今回は、彼のゴルフに対する気持ちの強さを感じたお話です。
マスターズに勝ったからこそ大事な試合になったZOZOチャンピオンシップ
2019年にアメリカツアーの大会である『ZOZOチャンピオンシップ』が日本で初めて開催されたとき、堂々勝利を飾ったのは、ゴルフ界の永遠の王者、タイガー・ウッズでした。
>>しゃべらない男・松山英樹を作り上げたのは強さへのこだわり
あのとき松山英樹はウッズの通算82勝目を「なんとかして阻止しようと頑張ったつもりだった」そうですが、残念ながら2位に甘んじ、母国のファンに雄姿を見せることはできませんでした。
2021年のマスターズ優勝は、もちろんテレビ中継を通じて日本のファンに見せることはできていましたが、日本の土の上で勝つ姿を見せたいと願っていた松山にとって、東京オリンピックでメダルを逃したことは、残念というより無念だったのだと思います。
2019年の『ZOZOチャンピオンシップ』での惜敗の悔しさと、東京五輪での無念。その両方を抱いていた松山選手にとって、習志野で勝つことは、いわば悲願でした。
それなのにゴルフの調子は「悪い状態」で戦っていたのですから、彼の戦いは、心身ともにぎりぎりだったに違いありません。
最終ホールのセカンドショットは歴史に残るスーパーショット
2019年に左膝の手術からわずか2か月で参戦したウッズがそうだったように、2021年の松山も、苦戦を乗り越えた末に習志野で勝利を挙げました。ゴルフ界の王者や日本のヒーローであっても、勝つことは常に難しく、試練を克服してトップに立つからこそ、人々は感動するのです。
そんな感動のビクトリーを支えてくれたのは、「みなさんです。みなさんのおかげです」と言ってもらったファンは、チャンピオンのそのセリフ、その表情を生涯忘れることはないでしょう。
松山選手の72ホール目の第2打は見事でしたし、イーグルフィニッシュも、2位に5打差の勝ちっぷりも素晴らしかった。
でも、「たくさんの人々の応援が力になった」と言った松山選手のその一言こそが、最高のエピローグだったのだと私は思いました。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)