プレー後のインタビューなど余計なことは話さないイメージの松山英樹選手ですが、今回はそんな松山選手が追い求めた“強さ”に関するお話です。
世界を感じたことで松山英樹は変わった
10年前、2011年にマスターズにアマチュアとして初出場し、アマチュアの最優秀賞にあたるローアマに輝いた松山英樹は「あのマスターズ以後、変わったんです」と、東北福祉大学ゴルフ部の阿部監督は振り返ってくれました。
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「アイツは『自分はまだまだ世界では通用しない。アプローチの精度が低すぎる』と言って、躍起になってショートゲームの練習を始めました。それと同時に『もう一度、あの舞台に立ちたい。オーガスタに戻りたい』と言い、そのためにはあれをしなきゃ、これをしなきゃという気持ちを強めて、がむしゃらに練習し始め、そうやってアイツは変わっていったんです」
日本人として初めてマスターズのローアマに輝き、日本人として初めてマスターズの表彰式に臨んだ松山選手でしたが、帰国後は有頂天になるどころか、むしろ自身の力不足を痛感し、さらなる鍛錬と努力の道を選んだのです。
そして彼は、第3回アジア・アマチュア選手権を連覇し、2年連続でマスターズ出場権を手に入れたのです。
手の内を見せないのは厳しい世界で生きるには当然のこと
その間、どんな方法で、どんな練習やトレーニングを積んだのかと尋ねると、阿部監督はこう説明してくれました。
「ヒデキは決して手の内は見せないし、明かしません。マスターズでローアマを取ってからというもの、いろんな取材が来ましたけど、練習やトレーニングに関する取材依頼はすべてノーでしたし、テレビの取材でも、自分がトレーニングをしている風景はすべてカット。
『撮影はトレーニングルームで座っているところとかでもいいですか』と言っていました。だって、自分がやっていることを、わざわざ他のチームや選手に教える必要はないじゃないですか。だから一番肝心なことは、しゃべらない」。
それは、ビジネスの世界で言えば企業秘密は明かさないという姿勢。松山選手は学生時代から、そういう厳しさの中でゴルフクラブを握っていたのです。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)