◆国内女子プロツアー<リシャール・ミル ヨネックスレディスゴルフトーナメント2023 in 朝霧 6月2日~6月4日 朝霧ジャンボリーゴルフクラブ(静岡県) / 6687ヤード・パー72>
27ホールの短期決戦は、川岸史果の涙の復活優勝で幕を閉じた。混戦模様の最終日は、川岸と佐久間朱莉が通算9アンダーで抜け出し、プレーオフに突入。1ホール目バーディーの川岸が、2017年マンシングウェア東海クラシック以来、6年ぶりのツアー2勝目を飾っている。前週の3位に続き惜しくも初優勝を逃した佐久間、首位スタートながら最終18番でスコアを崩した阿部未悠の3人をフォーカスする。
池ポチャに泣いた佐久間朱莉
あと一歩、届かなかった。怒涛のような展開の幕切れは、佐久間にとってほろ苦いものとなった。
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目の前の富士山が見えないほどの豪雨で金曜日のラウンドが中止となり、36ホール短縮が最初に決まった本大会。
だが、土曜日の午前中も雨が残り、第1ラウンドのスタートは12時までずれ込んだ。さらに短縮されて27ホールになることが決まったが、ホールアウトできたのは3人だけ。104人を残してサスペンデッドとなり、日曜日の午前中にようやく第1ラウンドが終了した。
規定によりセカンドカットが行われ、第2ラウンドはたった33人という史上最少人数での戦いとなった。
もたもたしている暇はない9ホールの戦いに、首位に2打ビハインドの11位タイで臨んだ佐久間は、積極的なゴルフで5つのバーディーを奪い、通算9アンダーで先にホールアウト。この日4つスコアを伸ばした川岸とのプレーオフに、ツアー初優勝をかけた。
意気込んで臨んだ大切な戦いの舞台は、少し前にバーディーを取ったばかりの18番パー5。だが、待っていたのは落とし穴だった。
第2打を右のクリークを入れてしまう痛恨のミス。ここからドロップした第4打をきっちり60センチに寄せて、パーは確実としたが、バーディーを奪った川岸の前に敗れた。
「(2オンは)狙ってないです。身体が起き上がってしまい、右に行ってしまったので、風も左からだったので余計右に行っちゃったかなと思います」と唇をかむ。
レギュレーションの9ホールについては、「完璧なゴルフができたと思います」と胸を張ったが、勝負どころでのミスについては反省。
先週のリゾートトラスト・レディスでも3位に入り、好調が続いているだけに、たちはだかる初優勝への最後の壁を必死によじ登っている。
18番の負のループで阿部未悠はトップ10入り逃す
阿部未悠も池に苦しんで戦いを終えた。
6アンダーの首位タイで山下美夢有、吉田優利と並び、初優勝も見える位置で臨んだ最終ラウンド。パー3の14番でバーディーを奪い、通算7アンダー。首位に2打差という位置で臨んだ18番で、悲劇が待っていた。
第2打がトップしてクリークの淵のラフに捕まったのだが、爪先下がりでボールがラフに沈んでいるという最悪のライ。「少しでも前に出せればパーのチャンスはあると思ったので狙ったんですけど、ちょっと難しかったですね」と、すぐ目の前のクリークに入ってしまった。
ドロップした5打目もグリーン手前の池に捕まる負のループ。6オン、2パットのトリプルボギーを叩き、通算4アンダー12位タイに終わった。
今年が初シードの22歳。富士フィルム・スタジオアリスでは、山下に1打差の2位タイに入っており、シーズン4度目のトップ10入りがかかっていたが、最終ホールで力尽きた。
「最終組が2回目とかだったと思うんですけど、最終組のどうのこうのって言うよりは、9ホールしかないのでそっちに集中してたのであんまり考えることはなかったですね」と、集中はできていた。
初優勝に向けて、こちらも苦しい戦いを乗り越えようとしている。
川岸史果が復活優勝!母と歓喜の抱擁
27ホール短期決戦の混乱も、山下の3週連続優勝がかかる状況もものともせず、川岸史果が見事な復活優勝を見せた。
『怪物』と呼ばれた川岸良兼を父に持ち、母、麻子さん(旧姓喜多)は日本女子アマを制してプロとなった実力者。サラブレットとしての注目に応え、2017年には飛距離を武器に初優勝して将来を嘱望されていた。
しかし、武器だったはずのドライバーショットから迷路にはまり込み、シードを1年で手放した。
「一番苦しかったのは、2018年、19年の初めくらいで、ドライバーが調子悪くて誰か人に当てってしまうんじゃないかみたいな気持ちがあった」と、当時の心中を吐露。昨年、ランキング40位でシード復帰を果たしたが、その間、ずっと支え続けたのが、今回もキャディをしている母だった。
その後、クラブ契約を離れて選択肢が増え、気持ちを切り替えて復調。今季はこれまでにトップ10入り6回と、優勝が見える状況まで戻ってきていた。
最後は、1ラウンド目にイーグルを奪った18番で決めたツアー2勝目。静かに母と抱き合い、勝利の喜びをかみしめる姿が印象的だった。
「レギュラー(ツアー)で長年キャディやってて、母がキャディしてる時に優勝してなかったので、やっとお待たせしましたっていう感じもありつつ、感謝もありつつ、いろんな思いがありました」と、言葉以上の気持ちを滲ませた。
『怪物の娘』から『史果の父』と、自嘲的に父が口にしていた時期を経て、表舞台のスポットライトの下に戻って来た。より若い選手が活躍する中、28歳になった川岸のスケールの大きなゴルフがどんなふうにツアーで光るのか、期待が広がる。