◆国内女子プロツアー<RKB×三井松島レディス 5月12日~5月14日 福岡カンツリー倶楽部 和白コース(福岡県) / 6299ヤード・パー72>
女子ツアー史上初のツインズプレーオフは、妹に軍配が上がった。JLPGAツアー『RKB✕三井松島レディス』最終日は、双子姉妹の岩井明愛、千怜と昨年の年間女王山下美夢有の3人が、通算11アンダーで並んでプレーオフに突入。2ホール目でバーディーを奪った岩井千怜が、ツアー3勝目を飾った。ついに、夢だった姉妹対決の物語が始まった。
史上初のプレーオフで実現!岩井ツインズの優勝争い
プロ3年目で早くも実現したツインズでの優勝争い。互いに切磋琢磨する2人が以前から口をそろえて目標に掲げていたそれは、プレーオフという最高の形になった。
2日目はともに最終組でプレー。最終日は別々でのプレーとなったが、プレーオフで再び相まみえることになる。
今年のKKT杯バンテリンオープンで初優勝している姉の明愛と青木瀬令奈、申ジエの3人が通算8アンダー首位でスタートした最終日。千怜は4打差7位タイから逆転を狙った。
出だし3ホール連続バーディーから始まった猛チャージで、7つスコアを伸ばして通算11アンダー。最終組の3つ前でプレーした千怜は、クラブハウスリーダーとして後続に重圧をかける。
そこに山下と、姉の明愛が追い付き、勝負はプレーオフに持ち込された。
姉を見て挑んだ初の“直ドラ”でつかんだ勝利
18番パー5の繰り返しで行われたプレーオフ。1ホール目は誰もバーディーが取れずに迎えた2ホール目の第2打地点でギャラリーが沸いた。
本戦の18番でも“直ドラ”でグリーン手前まで運び、バーディーで首位に並んだ明愛が、フェアウェーの右側から再びドライバーを握ってグリーン手前にナイスショット。それを見た千怜も、すぐそばからの第2打でドライバーを手にした。
「試合では初ですね。練習でも全然打っていなかったので」という初めての“直ドラ”。最初は3Wで打つつもりだったのだが、「明愛がドライバーを握ったので、そうだな、ドライバーもいいかも、と。ファンのみなさんを楽しませたいと思って私もドライバーを選びました」という大詰めでのジャッジは、グリーン手前への見事なショットとなった。
山下の6メートルのバーディーパットがカップにけられた後、明愛のバーディーパットは左手前2メートル。「思ったところには打てたのですが、ちょっと厚く読んでしまいました」と、入らずパー。直後に右手前から千怜が1メートルを沈めてバーディー。勝負に決着をつけた。
山下とのハグの後、それぞれの思いを抱いてハグを交わしたツインズ。初めての優勝争いは、千怜の逆転プレーオフ勝ちで幕を下ろした。
「信じられないという気持ちが大きいですね。今週は2日目に明愛と一緒に回って、プレーオフでも一緒にやれて、こんなすごいことが起きていいのかな?と思うぐらい。勝てたというのも信じられないですね」と、千怜は勝利の喜びに頬を染めた。
昨年夏に初優勝から2週連続優勝して明愛に先んじたが、今季は惜しいところで優勝できずにいるうちに、姉の初優勝を祝福していた。それだけに、勝利を渇望している中で、双子決戦での勝利の喜びはひときわ大きかった。
「8割悔しくて2割は千怜が勝ってくれてうれしい」
楽しくて、そして悔しいプレーオフ。敗れた明愛は心境を問われ、「悔しいです。8割悔しくて2割は千怜が勝ってくれてうれしいです」と正直に吐露した。
2日目に一緒にプレーした時には、笑顔で楽しそうな様子だった2人だが、プレーオフでは笑顔はあったが会話はなかった。「話しかけづらい感じで」と、明愛が振り返るような勝負のかかった場面だった。
勝負が決まった2ホール目のティーショットは、仲良くボールが近くに並んでいた。再び“直ドラ”を決めていた明愛は、日頃から練習ラウンドで打つこともあり、この週も試していた。
それを見てドライバーを選んだ妹についても、「千怜もドライバーで来るだろうな~と思っていました」と予測していたあたりは、やはり双子ならではだ。
コースに足を運んだ2人の母、恵美子さんは、18番で娘2人の勝負を見守った。今後、何度も繰り返される予感が漂う双子対決の最初の1戦は妹が勝利をおさめたが、2人が最高の舞台でプレーする姿こそ、母への最高の贈り物に違いない。