ゴルフ場で若い人たちを見かける機会が増えてきました。ゴルフ場に初めて足を踏み入れるゴルファーは、ゴルフ練習場やゴルフシミュレーターでは見たことがない設備に戸惑うケースも多いようです。今回は、コースデビューのゴルファーに必ず質問されるゴルフ場ならではの設備をご紹介します。
日本には1グリーンと2グリーンのゴルフ場がある
日本のゴルフ場はティーイングエリアに「BG」「KG」という案内看板が設置されていることがあります。「BG」は「ベントグリーン」の略、「KG」は「コウライグリーン」の略です。
ベントとコウライはいずれも芝生の種類です。ベントグリーンはベント芝を使用したグリーン、コウライグリーンはコウライ芝を使用したグリーンということになります。コウライ芝を高麗芝と表記することもあります。
この話をすると、「えっ、どういうこと? 1つのホールにグリーンが2つあるの?」という疑問が生じます。実はそのとおりで、日本には1ホールにグリーンが2つずつあるゴルフ場がけっこうたくさんあります。これには日本の気候が大きく関係しています。
ベント芝は西洋生まれの洋芝です。芝の葉っぱが細くてボールが滑らかに転がるのでゴルフ場のグリーンに適しています。ただし、寒冷型芝草なので高温多湿に弱いというデメリットがあります。
コウライ芝は日本に元々、自生していた日本芝です。暖地型芝草なので高温多湿には強いです。でも、芝の葉っぱが太いのでボールが転がる際に摩擦が生じやすいというデメリットがあります。
ボールが転がる音を擬音で表現すると、ベント芝は「コロコロ」と転がるのに対し、コウライ芝は「ガサガサッ」「ザザザッ」という感じの転がり方になります。
グリーンの表面には複雑な傾斜がついています。その傾斜を読み切ってボールをカップに入れるのがゴルフの醍醐味の1つです。そのためには傾斜どおりにボールが転がってほしいわけです。
ところが、コウライグリーンは芝の葉っぱが太くて地面に倒れやすいため、傾斜と逆に曲がることがある(ように見える)と多くのゴルファーは口を揃えます。
したがって、ほとんどのゴルフ場はベントグリーンを使用したいのですが、前述のとおりベント芝は高温多湿に弱く、夏の暑さに耐えられません。苦肉の策として春・秋・冬に使用するベントグリーンと、夏に使用するコウライグリーンを両方備えた2グリーンのゴルフ場が次々と誕生したのです。
使用していないグリーンにボールが乗ったら無罰で救済
一方で、1グリーンのゴルフ場はグリーンに近づくにつれてターゲットが小さくなっていくのですが、2グリーンのゴルフ場はグリーン周辺にどうしても広いスペースが生じます。それだと戦略性を高める上でふさわしくないと指摘されてきました。
2000年代に入ると、日本の夏の暑さにも耐えられる品種改良を重ねたベント芝(ニューベント)が普及しました。これによって、2グリーンを1グリーンに改造するゴルフ場が相次ぎました。
ところが2010年代に入ると日本の夏の暑さが一段と激しさを増し、ニューベントも暑さに耐えられなくなりました。この状況を目の当たりにしたゴルフ場関係者は1グリーン化に二の足を踏むようになり、2グリーンを継続するゴルフ場が主流になっています。
2グリーンのゴルフ場は、春・秋・冬はコウライグリーンをクローズにしてベントグリーンを使用します。夏はベントグリーンをクローズにしてコウライグリーンを使用します。
使用していないグリーンは目的外のグリーン(サブグリーン)なので、そのままプレーすることはできず、無罰で救済を受けなければなりません。細かいルールはここでは割愛しますが、「使用していないグリーンにボールが乗ったら無罰で救済を受けなければならない。そのままプレーしたらペナルティーになる」ということは、覚えておいたほうがいいでしょう。
文/保井友秀