◆国内女子プロツアー<アクサレディスゴルフトーナメントin MIYAZAKI 2023 3月24日~3月26日 UMKカントリークラブ(宮崎県) / 6565ヤード・パー72>
涙と笑顔でサクラサクー地元の宮崎で、山内日菜子が最高の初優勝を飾った。国内女子ツアー『アクサレディスゴルフトーナメント in MIYAZAKI 2023』は、26日に最終日を行い、宮崎県出身の山内日菜子が、通算10アンダーで混戦を制した。ツアー5勝の比嘉真美子、昨年2勝で勢いのある川﨑春花との最終組で一歩も譲らない戦いで、家族や地元の応援をパワーにした涙の初優勝の裏側にあった喜怒哀楽に迫る。
おにぎりを食べながら打った勝利の1打
“もぐもぐショット”が、勝利へのカギだった。
混戦模様の中、首位タイで迎えた16番パー3。この日のピン位置による実測値は172ヤードの大事な場面で、6Iを持った山内は、口をもぐもぐさせながらクラブを振りぬいた。
「16番ティーからめちゃくちゃ緊張しました。WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)を見ていても、ガム嚙んでた選手が多かったので、口を動かす方がいいと思って」との判断だった。だが、噛んでいたのはガムではない。持参のおにぎりだ。
18ホールに4時間から5時間かかるゴルフでは、途中のエネルギー補給のために飲み物はもちろん、食べ物を持ってプレーするのは当たり前。山内もおにぎりを持っていたのだが、それを勝負どころで上手に使った。
「もぐもぐしながら打ちました」と、5メートルのバーディーチャンスにつけた。これを沈めて通算10アンダー。単独首位に立つ。
続く17番ではティーショットを右のバンカーに入れたが、見事なショットでパーセーブ。
「(比嘉)真美子さんが(18番のバーディーパットを)打つまでプレーオフは覚悟していました」というが、比嘉はバーディーを取れず、山内は18番もきっちりパー。1打差で優勝を決めた。
縁の深い大会で恩返し
1996年4月22日生まれの26歳。ゴルフ王国・宮崎で生まれ育ち、山内は腕を磨いた。その中でも一番プレーしていたのが、今大会の舞台、UMKカントリークラブだ。2016年にプロとなり、今年が8年目となる。
2017年には、ステップアップツアー『Hanasaka Ladies Yanmar Golf Tournament』で優勝したが、レギュラーツアーでシード権を手にすることがなかなかできずにここまで来た。
「調子は悪くない状態で、QTに臨めてたので、今年は絶対いけると思った」という思いとは裏腹に、2022年のQTはセカンドステージで脱落。ステップアップツアーすらほとんど出られない181位に甘んじて「終わったなって…」と、優勝インタビューでもその話になると涙ぐむほどの辛い状況に追い込まれた。
試合がほとんどない中、地元開催のこの大会は主催者推薦で出場できた。実は2013年に行われた第1回大会の最初に1打を打ったのは、まだ高校生でアマチュアだった山内だ。奇しくも、一緒に回った1人は比嘉。そんな縁のある大会の第10回記念大会で、チャンスを最高の形で生かし、支えてくれた地元の期待に応えた。
「ホントに(試合の)3日間に限らず、最後までいろんなところで声かけていただいて。ここに練習に来た時も、ゴルフ場の方たちがすごい優しく『頑張れ、頑張れ』って…優勝できて感謝の気持ちでいっぱいです」と、そこまで話して、また涙ぐむ。苦しい時期を思い出しての歓喜の涙だ。
「宮崎らしい」と選んだオレンジの勝負服
初めての最終日、最終組で挑んだ優勝争いに、選んだのはオレンジ色のウェアだった。雨から曇りという天候に、光が差し込むような色は「宮崎っぽいな」と言う気持ちからだった。
取り囲むギャラリーの、あちら、こちらに散らばる見覚えのある顔、顔、顔。その前で、鮮やかなオレンジ色の山内が躍動する。練習環境のいい宮崎は、多くのプロを輩出している。この日も、勝利の瞬間を見守った選手たちの中に、柏原明日架、脇元華の顔があった。
9歳からゴルフを始めた娘を導いた父、見守った母。「一番身近で応援してくれてました」という両親がいる自宅で過ごしながら、プレーした大会。その目の前での優勝が最高の親孝行なのは言うまでもない。
「ホントにうれしいです。勝てたのがホントに自信になったので、2勝目、3勝目を挙げられるように、今後の試合も頑張ります」
次戦からは、シーズン終了まですべての試合に出場できる。もう、試合を求めて悩むことも、QTの心配もない。思う存分、自分のプレーに集中して、次のステップに突き進む。