◆国内女子プロツアー<明治安田生命レディス ヨコハマタイヤゴルフトーナメント 3月9日~3月12日 土佐カントリークラブ(高知県) 6228ヤード・パー72>
吉本ひかるが、激戦を制してツアー7年目で初優勝を飾った。「明治安田生命レディスヨコハマタイヤゴルフトーナメント」の最終日、単独首位でスタートした吉本をささきしょうこが猛追。通算19アンダーで並び、18番の繰り返しとなったプレーオフ2ホール目。吉本がバーディーを奪い、勝負に決着をつけた。苦しい日々を乗り越えて味わう勝利の美酒は、涙あふれるものとなった。
思わず飛び出した歓喜のジャンプ
左から9メートルのバーディーパットが、緩やかなフックラインを描いてカップに吸い込まれる。
少し驚いた表情を見せた吉本は、思わず両足でジャンプ。少しはにかみながら笑顔を弾けさせた。プレーオフ2ホール目。直後に右上から打ったささきのバーディーパットはカップの右側を通り過ぎ、吉本の優勝が決まった。
吉本は、2日目にささき、三ヶ島かなとともに首位に立ち、3日目もスコアを伸ばして通算16アンダー。ささきに2打差の単独首位で迎えた最終日だったが、苦しい展開を強いられた。
緊張感の中、なかなかチャンスにつけられない前半、ささきが猛追。7番で並ばれ、ボギーを叩いた9番ではバーディーを奪われて2打差をつけられた。
12番を終えた時には3打のビハインドだったが、「後半の方がバーディーを取れるし、弱気になるのはやめよう、バーディーを取ろう」と、前向きな気持ちを持ち続けた。
13番で右手前8メートルのバーディーを決めたところで、気持ちが落ち着いた。「緊張っていうよりかはプレーを楽しんで、バーディーを取ろうって感じでやってました」と、流れが変わっていく。
14番でささきがボギー。15番で吉本が3メートルを沈めたところで、通算18アンダーで並び、16番で右から1メートルを沈めて再び首位に立つ。ささきも17番バーディーでくらいついての、プレーオフだった。それを戦い抜いての勝利となった。
「左右に曲がって振れない」苦しみと向き合った日々
苦しい日々を乗り越えて、ようやく手にした優勝だった。
1999年2月25日生まれ。“黄金世代”と呼ばれる実力者揃いの同学年の選手たちの中で、ジュニア時代からもまれて育った。
プロテストに合格した2017年には、ステップアップツアー「日台交流うどん県レディース」で早速優勝。2019年には、賞金ランキング28位で初シードも獲得した。2週続けて2位に入るなど、優勝まであともう少し。そんな感触を覚えていた。
ところが、新型コロナウイルス感染拡大で試合中止が続き、結果的にロングシーズンとなった2020-2021年に落とし穴が待っていた。
8月の「NEC軽井沢72」で、「思いっきり右にプッシュして、そこから振れなくなっちゃって。左右に曲がって振れないって言うのが続いた感じです」と、雨が降っていたとはいえ、想像を超えるミスショットをした。これをきっかけに泥沼に陥り、賞金ランキング62位。シードは1年で失った。
QT38位でなんとか試合に出場した2022年は32試合に出場。因縁の「NEC軽井沢72」で2位タイに入ったが、シード権のかかるメルセデスランキングは68位に終わった、
だが、調子の悪い間に、中島敏雅コーチ、飯田光輝トレーナーについて体とゴルフの再構築に挑んだことが結果につながった。QT28位で挑んだ2023年2戦目での優勝は、その表れだ。
ギャラリーの前でマイクを向けられたインタビューで、涙で顔をくしゃくしゃにして本音を吐露した。「辛いときが多かったんですけど、優勝できると信じて諦めずにやってきてよかったなとめっちゃ思います」。それほど、辛い日々を乗り越えた。
優勝に近づいたと思った2019年について、「自分の考えが甘かったと思います。今は」と振り返る。「今の方がめちゃゴルフのことを考えている。スイングの分析もできるようになった」と胸を張り、ツアー2勝目に向けて気持ちを切り替えた。
家族のサポートとともに狙う2勝目
滋賀県出身。4人姉妹の次女として生まれた。1歳上の姉、百花さんもゴルファーで、現在はティーチングプロを目指している。その傍らで、吉本のキャディとしてバッグを担ぐことがほとんどだ。たまたまこの週は、キャディではなかったが、ほかの家族とともに優勝シーンを見守ってくれた。
家族のサポートに話が及ぶと「本当に、悪いときもすごい励ましてくれて、感謝の気持ちしかないです」と、涙が止まらなくなる。辛い時間を支えてくれたことがよくわかる。
次は、勝利の瞬間を姉とともにロープの中で味わう。そのための戦いが続く。