ゴルフで健康になる!今こそ注目すべきフレイル予防【小川朗のゴルフ深掘り!】

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コロナ禍でも密にならず感染リスクの少ないスポーツとして根強い人気を誇ったゴルフ。練習場もゴルフ場も盛況が続いていますが、その魅力は心身ともに健康になれること。特に年配の方に、その効果は顕著であることが分かってきています。

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ゴルファーはノンゴルファーと比べて5年長生きというデータが!

 昨年の9月28日、日本女子オープンの開幕を翌日に控えた紫CCすみれコースで、興味深いデータが発表されました。平均するとゴルファーはノンゴルファーに比べて寿命が5年長く、糖尿病が30〜40%、心臓疾患が20〜35%、結腸癌が30%、うつ病・認知症が20~30%など、リスクが軽減されるというのです。

 これは記者会見に出席したR&Aのアジア太平洋ディレクターであるドミニク・ウォール氏が明かしたもので、30万人のデータから導かれた結論であるとのことでした。その理由として挙げられるのが、ゴルフは「適度に激しい身体活動」であること。

 代謝量はサッカーの10に対し、1万1000歩~1万7000歩を歩く手引きカートのゴルフでは5.3。6000歩は歩く乗用カート使用でも3.5と、中強度のエクササイズにより、特に年配者の筋力強化に最適な運動習慣が健康に役立つことが分かってきたわけです。

 また1000時間あたりのけがのリスクも、テニスやサッカーに比べ格段に低いこともデータが証明しています。

フレイル予防にも有効

 「フレイル・サイクル」という言葉をご存じでしょうか。介護業界では浸透している言葉ですが、一般の方には馴染みが薄いかもしれません。

 「フレイル」とは加齢に伴い心身が衰えていく状態のこと。医療・介護関係者の間で、団塊から上の世代の多くが今、フレイル状態から要支援・要介護の領域へと向かっていることが問題視されているのです。

 この状態に陥る前の段階を表す言葉としてよく語られるのが「フレイル・サイクル」。定年退職後に周囲との関係性がなくなり、自宅にこもりがちになるのが、その入り口。この時点でデイサービスに一度は出かけてはみたものの、結局行かなくなるケースが少なくありません。

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 デイサービス施設から足が遠のく原因の一つとしてよく聞かれるのが、「みんなで同じ体操をさせられたり、歌を歌わされたりして大人の幼稚園みたいだったから」。デイサービスに行っても、楽しくないからです。この傾向は、特に仕事ばかりしてきた男性に多いようです。

 その結果、一日中パジャマやジャージでの生活が続くことに。加齢に起因する筋力や筋肉量の減少が拍車をかけると活動、エネルギー消費量が低下していくことになります。その状態では食欲が湧かないので食事の摂取量が減り、タンパク質をはじめとした栄養の摂取不足による低栄養の状態にもなっていきます。これが続くと体重が減り、筋力や筋肉量がさらに減少。こうした悪循環が「フレイル・サイクル」なのです。

 その先に転倒や骨折、あるいは慢性疾患の悪化が引き金となった要介護状態があります。フレイル・サイクルが招く最悪のパターンがこれです。それだけに「フレイル・サイクル」の入り口に立った時、何とか引き返すことが大事。そのキッカケとなっているひとつに、ゴルフがあります。実はデイサービスにも、ゴルフができる施設があるのです。

シミュレーションゴルフからリアルなゴルフに復帰も

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 栃木県の代表的なデイサービス施設「グッドエイジクラブ宇都宮」には、トレーニング機器やリラクゼーションカプセルなどの設備に加え、ゴルフシミュレーターも設置されています。これが家に引きこもりがちな男性を、デイサービスの常連にさせる大きな魅力になっているというのです。

 「使用するのはほとんど男性で、常連さんが多いです。1日2~3人は利用されています」(中田良江施設長)

 他の施設を含め、利用者の多くは若い頃にプレーしていて、その後加齢とともにラウンドをやめてしまった方が多いのは確か。それでも久々にシミュレーターで常連さん同士が対戦し、「またコースでやりたくなってくるね」と語る利用者の方もおられました。一度ゴルフから離れた人でもクラブを久しぶりに握ったことで、「もう一度フェアウエーで」と思わせるだけの魅力は十分にあるようです。

 “リハビリ”に成功後、カートのゴルフから再開し、再びフェアウエーを歩く手引きのゴルフまで行ければ大成功。フレイル・サイクルを回避したことになります。1970年に310人しかいなかった日本の100歳以上の高齢者は、2012年には5万人の大台に乗り、昨年の老人の日(9月15日)には9万人の大台を超え9万526人に達したと厚生労働省から発表されています。

 65歳以上の高齢者率が全体の3割に達しようとする「老人大国」日本こそが、「ゴルフで健康になる」プロジェクトに注力すべき国なのかもしれません。

文/小川 朗(日本ゴルフジャーナリスト協会会長)

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