◆国内男子プロツアー<日本オープンゴルフ選手権競技 10月20日~10月23日 三甲ゴルフ倶楽部ジャパンコース(兵庫県) 7178ヤード・パー70>
初日から首位を走った蟬川泰果(せみかわ・たいが/東北福祉大4年)が最終日も73にまとめ、通算10アンダーで完全優勝。アマチュアとしては第1回大会(1927年)の赤星六郎以来、95年ぶりの「日本オープン」制覇となった。
蝉川は9月25日に最終日が行われた「パナソニックオープン」でツアー史上6人目のアマ優勝を飾ったばかりで、1か月にも満たないうちに、過去の5人が成しえなかったアマ2勝の大記録も達成した。なお、2位には2打差で比嘉一貴が入った。
ド派手なガッツポーズとともに優勝を決めた蟬川泰果
涙、涙だった約ひと月前の優勝とは大違い。
左手に握ったパターを突き上げてから、今度は右手のこぶしを振り回してド派手なガッツポーズ。「まさかパーセーブできると思っていなかったので、2メートル手前で入るかな、と確信して、気づいたらガッツポーズをしていました」と、その瞬間を笑顔とともに振り返った。
だが優勝までの道のりは、平坦とは言い難かった。
最終日最終組を共に回ったのは、現在ツアーの賞金ランク1位を走る東北福祉大の先輩・比嘉一貴。その目の前で1番から連続バーディーのロケットスタート。15アンダーまでスコアを伸ばし、この時点で2位の比嘉に8打差をつけたが、9番でまさかの事態が起きる。
前日は3Wでワンオンに成功、イーグルを奪ったこのホール。最終日はティーが後方に下げられたこともありレイアップしてフェアウエーをキープしたが、141ヤードの第2打がキャリーでグリーンをオーバー。奥の深いラフにつかまった。3打目のアプローチでまさかの事態が起こる。クラブヘッドがボールの下をくぐって脱出に失敗。さらに4打目も同じく、だるま落としの状態でボールはそのまま。5打目は強く入ってピンを約5メートルもオーバー。このパットも決まらず、トリプルボギーの7を叩いてしまった。
一方、これを見た比嘉は左2.5メートルのパットをしっかり決めてバーディー。わずか1ホールで8打差が4打差まで詰まり、サンデーバックナインへと突入することとなった。
10番のパーセーブで落ち着きを取り戻した
優勝争いの真っただ中で、衝撃的なミスを連発してのトリプルボギー。本人の胸中も穏やかではなかった。
「まさか9番の奥からのアプローチが、2回くぐると思ってなかったので、本当にヒヤっとした」と本音を漏らしたが、そのミスを引きずらないところが世界アマチュアランキング1位たるゆえん。
続く10番のパー4でもアイアンでティーショットを放ちながらラフにつかまり、残り133ヤードの第2打を左手前のバンカーに入れるピンチが続く。しかし、このバンカーショットを見事に30センチにつけパーセーブ。
「あれは大きかった。あの一打で気持ちも立て直せた。あの一打はいま考えると、大きいなと思います」と、振り返った。
その後は16番までスコアカード通りのゴルフを続けた蟬川。17番でグリーンオーバーして寄らず入らずのボギーを叩いたが、最終ホールで冒頭の優勝シーンへとつなげた。
タイガー・ウッズが名前の由来。「見ていて面白いな、だったり、すごいなと思えるようなプレーをできるようなタイガー・ウッズみたいな選手になれるように、頑張っていきたいと思います」
日本のタイガーは、その言葉通り、順調にスターへの階段を上り続けている。