◆国内女子プロツアー<リシャール・ミル ヨネックスレディス 6月3日~6月5日 ヨネックスカントリークラブ(新潟県) 6475ヤード・パー72>
2020‐2021年シーズンに9勝を挙げて賞金女王になった稲見萌寧だが、今季は今一つ調子が上がらず、13試合を終えてトップ10入りが6回ながら未勝利。だが、14戦目となるリシャール・ミル ヨネックスレディスで、初日から首位を守り切る完全優勝を飾り、ようやく本領を発揮した。
「思ったより早く優勝できてよかった」
1メートルのパーパットを沈めると、両手を挙げてバンザイをした。
待ちに待ったシーズン初優勝。「今季初優勝できてとりあえずよかったです」。ホールアウト後、最初に行われたテレビの記者会見で、稲見は静かに喜びをかみしめた。
意外な言葉も飛び出した。「今年の初優勝を思ったより早くできてよかった。去年たくさん活躍できたからこそ、今年頑張らなきゃいけないという思いもあったので、まず1勝目を挙げて一番ほっとしています」。周囲の期待がヒートアップする中、一番、冷静だったのは本人だったのかもしれない。
確かに、オフシーズンの会見でも、昨年とはキッパリ一線を引いて、「まずは1勝が目標です」と言い切っていた。それほど、シーズンごとに調子の波が上下することをわかっていたのだろう。
8戦4勝と勝率5割の勢いを見せた昨年の稲見を思い出させるような、西郷真央の怒涛の活躍にも焦ることなく、自分を貫き、落ち着いてプレーを続けていたことが伝わってくる。
“反り腰”矯正で力が入らなくなった
調子が上がらない原因もはっきりと自覚していた。オフに“反り腰”を直そうと腰を丸めることを意識していたら、「力が入らなくなってしまった」というのがそれだ。
「アドレスしても、どこに自分の重心があるのかわからなくなって、気持ち悪くて違和感があって悩みながら」と試行錯誤。10戦目のサロンパスワールドレディスあたりから、気持ち悪さが徐々に消えていった。それと合わせて、3位タイ、3位タイ、2位、21位タイと、ハッキリと結果が出始める。優勝は時間の問題だった。
メルセデスランキングは2位に浮上
圧巻は、16番のパーセーブだ。単独首位で優勝が見えてきた大詰めのパー3。ティーショットがグリーン右のバンカーにつかまったのだが、これが目玉になった。パーセーブが危ぶまれる難しいショットだが、52度のウエッジを持った稲見は、「ちょっと開いて上からバーンという感じ。とりあえず前に飛ばすように」と、3メートルに寄せた。
「目玉の練習?しないですね。得意な人はいないんじゃないかなと思います。状況もそうですけど、見た目にやられそうな感じだったので、もう1回バンカーでもおかしくなかった。スゴイでき過ぎという感じ」と笑ったが、この後の、パーパットもすごかった。
3メートルの上りのスライス。「しっかり自分が思った通りに打たないと入らないと思った」というパットをねじ込んだ。「(2打目、3打目は)全能力を使った感じですね」という言葉通り、この16番が勝利へのカギとなった。
今回の優勝で、ポイント制のメルセデスランキングは6位から2位に浮上。再びタイトル争いに加わる気配を見せているが、本人はあまり意識していない。「そんなに(順位が)あがったんですね。元々自分が何位かもわからなかった。とりあえず、順位というよりももう1回勝つことに集中して頑張っていきたいと思います」と、あくまでもマイペース。
今週は、メルセデスランキング首位の西郷をはじめとする全米女子オープン参戦のメンバーがいない中での優勝だったが、次は今季好調の面々を撃破する。そんな勢いが、稲見に戻ってきた。