◆国内女子プロツアー<樋口久子三菱電機レディスゴルフトーナメント 10月28日~10月30日 武蔵丘ゴルフコース(埼玉県) 6650ヤード・パー72>
樋口久子三菱電機レディス最終日。3打差単独首位で臨んだ金田久美子は、途中、川﨑春花に1打差に迫られる苦しい展開をしぶとく切り抜け、2打差で振り切った。
幼いころから“天才少女”と呼ばれ、アマチュア時代に優勝争いも経験していたが、勝ったのは2011年フジサンケイレディスの1回だけ。33歳になった今年はシード権もなく、QT87位からの苦しいスタートだったが、結果を出してリランキングで出場権を得て、復活の2勝目にこぎつけた。
11年189日ぶりの優勝はツアー最長のブランク。33歳になった今、次の目標に向かって走り出す。
うまくいかずに結構きつかった11年。それでも諦めなかった金田久美子
あふれる涙が止まらない。11年189日ぶりのツアー2勝目。21歳から33歳という時間は“ギャルファー”と呼ばれた金田を、ベテランに変えていた。
「正直(6月のアース)モンダミンの時に優勝争いできて、最終組で回れるようになったんだなとか、上位で争えるようになったんだなって思ってたんですけど、(シーズン)中盤から後半にかけてなかなか成績も出なくて。でもやっぱり最後まであきらめずに頑張ろうと思ってて。(優勝は)ちょっと予想できなかったけど・・・。結構きつかったんですけど、うまくいかないことの方が多かったので、本当よかったです」と、喜びを爆発させた。
優勝インタビューで苦しかった日々を思い出し、声を詰まらせると、取り囲むファンから声援が飛ぶ。
「今日は特にというか、すごい声援、応援の声が聞こえてきて、1打1打打つたびにすごい大きい声で『ナイス』と言ってくれてすごく力になりました」と、ファンを味方につけての、待望のツアー2勝目をかみしめた。
ゴルフ場に着いただけで涙が出る壮絶な日々
優勝をグイッと手繰り寄せたスーパーショットは17番の第2打だった。
11番でボギーを叩き、このホールでバーディーの川﨑に1打差に迫られた。14番のバーディーでほっとしたのも束の間、15番では3パットのボギー。再び1打差で迎えた大事な場面で、残り160ヤードの第2打を、7番アイアンで1メートルにピタリとつけた。
パー5の18番もバーディーチャンス。これは惜しくも入らなかったが、2オンした川﨑もパーに終わり、2打差で逃げ切った。
「(17番は)先週まで苦手な前上がりの左足下がりのライだったんですけど、結構自信を持って打てたのもあるし、ここで決めたら勝てるのかなと思ってそれなりのショットができました。勝負どころは結構きちっとできたのかなと思います」と胸を張る。
「プロになったくらいの時には、正直すぐ勝てると思ってましたし、賞金女王にもなりたいと思ってましたし。ただ、現実を見て、そんなに甘くないし、自分の実力のなさも知って」と振り返る若き日々。
「5~6年前とかは、ゴルフ場を見るだけで涙が出てきたり、ゴルフ場に着いたら涙が出て吐いたりとかもありました。じんましんも凄くて、体に出たこともあって」と、打ち明けた壮絶な日々を乗り越えてようやく手にした勝利だった。
SNSでの“攻撃”とも戦いながらの勝利だった
SNSにも心ない声が届いた。
食事や、オフの私服姿を投稿するだけで、「そんなことしてるから勝てないんだ」「もっと練習しろ」などという書き込みがたくさん来ると言う。
それに対し、「絶対勝って見返してやる、とずっと思ってました」と結果的に糧にした。
しかし、精神的に弱っている時はきつかったという。不調だけでなく、故障や自分を傷つける声とも戦いながらの復活優勝。11年189日の長いブランクには、「めっちゃ長かったです。めちゃくちゃ長かったです」と繰り返すところに実感がにじむ。
今後については、「まずは2勝目を目標にやってきたので、もう1回考えてそこに向かって組み立てていきたいと思うんですけど、今は3勝目をしたいなってことと、昔からの目標は常に上位で戦える選手に」と宣言した金田。
若い頃には「25歳でやめる」と言い続けていたが、33歳の今は、「まだやるでしょうね。まだできると思ってるうちはやりたいと思います」と満面の笑みを見せた。まだまだゴルフへの思いは尽きない。