◆国内女子プロツアー<樋口久子三菱電機レディスゴルフトーナメント 10月28日~10月30日 武蔵丘ゴルフコース(埼玉県) 6650ヤード・パー72>
帰国組2人の明暗が、最終日になってはっきりとわかれた。
金田久美子が11年ぶりのツアー2勝目を飾った樋口久子三菱電機レディスには、米ツアーを主戦場とする畑岡奈紗、渋野日向子の2人が出場。ともに首位に10打差の28位タイで最終日に臨んだ。渋野が4つスコアを伸ばして9位タイに入ったの対し、畑岡は4つスコアを落として47位タイで大会を終えた。
「楽しすぎたくらい」3日間を戦い切った渋野日向子
5か月ぶりに日本ツアーでプレーした渋野を見るために、たくさんのギャラリーが3日間会場に詰めかけた。
ルーキーとして米ツアーを中心にプレーしている渋野は、5月のブリヂストンレディス以来となる今季2度目の日本ツアー出場。ブリヂストンでは予選落ちしているが、その後、全英女子オープンで優勝争い(3位)をするなどの活躍も見せている。
初日の早朝から、最寄り駅のギャラリーバス乗り場に人々が並ぶほどの集客は“渋野効果”だったのはまちがいない。
試合が始まってからは、初日は61位タイと出遅れたが、ナイスショットには満面の笑みを、ミスした時は悔しそうな顔を隠さない人間らしさに引き付けられるファンは多かった。
最終日も10番スタートの“裏街道”。トップから2組目というスタート時間にもかかわらず、大勢のギャラリーを引き連れてプレーした。11番で第2打をピンにピタリとつけるバーディーを奪った後は、13番で7メートル、14番で80センチとバーディーを重ね、リズムよくラウンドした。
後半は、3バーディー、2ボギーだったが、これで通算3アンダー。9位タイに入り、ディフェンディング・チャンピオンの面目を保った。
「自分のショットの気持ちよさとスコアが全く比例していないような1日だったんで、ちょっとよくわからない感じではあったんですけど、パターが入ってくれたり、ラッキーがあった分(結果がよかったの)かなぁ、っていう感じです」と、複雑な表情を見せたが、結果オーライ。
連日、大歓声の中でのラウンドに、「やっぱりすごい楽しかったし、楽しすぎたくらいかな」と笑う。観客を「ギャラリーさん」と呼び、味方につけてどんどん気分良くプレーする“しぶこスタイル”は健在だ。
米ツアー選手としてTOTOジャパン出場は目標だった
次週のTOTOジャパンクラシック(11月3日~6日、滋賀・瀬田GC北C)にも出場を予定している渋野。日本で行われる米ツアーの1戦であるこの大会には、米国からの出場枠と、日本からの出場枠がある。
渋野は、ここに「アメリカツアーの選手として出る」ということを今年の目標の1つにかかげていた。それがかなっての出場に、「すごくうれしいです」と笑顔を弾けさせる。
日本のファンの前でもう1試合プレーした後は米国に戻り、ペリカン女子選手権(11月10日~13日、フロリダ州ペリカンGC)、CMEグループツアー選手権(11月17日~20日、フロリダ州ティブロンGCブラックC)の2試合でシーズンを締めくくることになる。
1年間、米ツアーでもまれ、最終日まで粘り強く戦うようになった成果でもある、今回の最終日の9位タイ浮上。この底力を残る3試合で発揮して、2019年全英女子オープンに次ぐ米ツアー2勝目にも期待がかかる。
経験がネガティブに出てしまった畑岡奈紗
渋野とは対照的に、畑岡奈紗は1バーディー、5ボギーといいところが少ないゴルフで、通算5オーバーの47位タイに沈んだ。
「なかなかパー5でリズムを作れなかったりだとか、チャンスが少なかったのでミスからの流れも断ち切れなかったかな」と、悔しそうな表情を見せた。
日本でプレーするのは、2020年のTOTOジャパンクラシック以来2年ぶり。コロナ禍で日米を行き来すると長い隔離期間を余儀なくされることから、出場を断念していたからだ。
樋口久子三菱電機レディスには、高校3年生で日本女子オープンに優勝した2016年の約1年前、高校2年生の時に初出場している。日本女子オープン優勝後にプロに転向し、最初から米ツアーを戦いの場に選んできただけに、出場するのはこれが3回目。
「高校生の頃はいい意味で何も考えずにピンだけ見て打っていたので、逆に今回戻ってきてグリーンの傾斜がこんなにあって難しかったんだな、と感じたりしています。経験を積むのはいいことでもあるんですけど、反対に見たら悪いことじゃないですけど、なかなかネガティブなこともあったりするので」と、大会前に口にしていたことが、残念ながら的中してしまったようだ。