◆海外男子プロツアー<全英オープン 7月14日~7月17日 セントアンドリュース・オールドコース(スコットランド) 7313ヤード・パー72>
タイガー・ウッズがエモーショナルな涙を浮かべて聖地を去った。現地時間15日に、セントアンドリュース・オールドコース(スコットランド)で行われた第150回全英オープン2日目。3つスコアを落としたタイガーは通算9オーバーで予選落ちとなったが、その姿を温かいスタンディングオベーションが包み込む。大会3勝。うち2勝を飾った特別な地での最後の全英オープンを終えた瞬間だった。
スタンディングオベーションに包まれた最後の時間
フェアウェーを歩きながら感極まった。ホールを取り囲むギャラリーの温かいスタンディングオベーションが、どんどん大きくなる。キャップを取ったタイガーが下を向く。こらえきれずに手で顔を覆った後、キャップを頭上に高く掲げてファンに応える。グリーンではさらに大きな拍手で迎えられ、パーパットを沈めて、聖地での全英オープンに別れを告げた。
毎年変わる全英オープンの舞台は、この先2025年まで決まっている。次にセントアンドリュースに戻ってくるのがいつかはハッキリしないが、慣例的に早くても2027年となる。現在、46歳のタイガーは、その時51歳。2021年の交通事故で大けがを負った右足と右足首が完治しておらずに苦しんでいることと年齢を考えると、そこで優勝争いができるプレーができる可能性は極めて低い。
そのことを、タイガー自身も、ギャラリーもよくわかっていた。1995年にアーノルド・パーマーが、2005年にはジャック・ニクラウスがそうしたように、タイガーも聖地での最後の時間をしみじみと味わった。
「アーニーとジャックの気持ちがわかった」
「とてもエモーショナル。1995年からここに来ている。次(にここで全英オープンが開催されるの)は2030年前後になるだろう。肉体的にその時プレーできるかどうか。セントアンドリュースでは、これが最後の全英オープンになる」
ホールアウト後、そう口にしたタイガー。その瞳には、今にもあふれそうな涙があった。
アマチュア時代の1995年に、初めてセントアンドリュースでプレーした時には、アーノルド・パーマーが聖地に別れを告げる様子を見た。その前の年に全米アマで優勝した、将来有望な自分をかわいがってくれたパーマーの姿に大きな感動は覚えても、当時まだ19歳だったタイガーには、その気持ちの本当のところまではわからなかったはずだ。
5年後の2000年、タイガーはこの地で全英オープン初優勝を飾る。さらに5年経った2005年にも優勝。その年はジャック・ニクラウスが感傷的なさよならを聖地に告げている。タイガーは、すでにキャリアグランドスラムも達成していたが、それでもまだ29歳の若者だった。
その後、プライベートでのトラブルやたび重なる手術を乗り越え、2019年のZOZOチャンピオンシップで、サム・スニードに並ぶツアー通算82勝目を挙げたタイガー。しかし、2年後の2021年2月に単独で交通事故を起こして重傷を負う。そこからカムバックは果たしたものの、まだまだ歩行が苦しい状態にあり、46歳になった今季は、マスターズ、全米プロと今大会のみに出場している。
そんなタイガーだけに、「アーニー(パーマー)とジャック(ニクラウス)の気持ちがわかった」と、しみじみとセントアンドリュースへの思いを語った。
次の試合は来年?タイガーが起こす奇跡を期待したい
引退について質問されると、「肉体的にこれから競技で戦うゴルフができるかどうかわからない」と、この日は答えた。
年内に試合でプレーする予定はなく、「(試合出場は)来年以降になるだろう」と、しばらくはリハビリと体づくりに専念するつもりでいる。一方で、あと1勝すればツアー最多勝の記録を更新できるため、そのレベルに戻して奇跡の復活を、という思いもある。
ジャック・ニクラウスが最後にマスターズに優勝し、“Jack is back”とファンを熱狂させたのは1996年のこと。ニクラウスは46歳だった。その年齢に達したタイガーが、この先、どんな姿を見せてくれるのか。
何度もどん底から這い上がり、カムバックを果たしてきた男だけに、奇跡を起こす可能性は残されている。