◆国内男子プロツアー<第89回日本プロゴルフ選手権大会 8月4日~8月7日 グランフィールズCC(静岡県)7180ヤード・パー72>
桜色の軍団の熱い応援を受けた堀川未来夢が、2つ目の国内メジャータイトルを勝ち取った。第89回日本プロゴルフ選手権大会最終日は、首位スタートの堀川未来夢が通算15アンダーで優勝。ツアー通算3勝目をゲットするとともに、5年シードも獲得した。2位には3打差で片岡尚之(フリー)が入った。
桜色の応援団が優勝を後押し
堀川のパットがカップに沈むたびに、桜色(ピンク)のユニフォームに身を包んだ一団から、拍手と熱い声援が贈られる。ギャラリーの中でもやたらに目立つその集団は、大学ゴルフの強豪・日本大学ゴルフ部の面々だった。
三島市には日本大学ゴルフ部の学生寮があり、同市内にあるグランフィールズCCでは日頃から日大ゴルフ部が練習しており、部員はキャディーのアルバイトもしている。
優勝した堀川も日大ゴルフ部の出身で、卒業後もコーチとして残留。度々、合宿にも訪れている。出場選手中誰よりもコースの隅々まで知り尽くしている、いわば「自分の庭」で大一番を戦うアドバンテージに恵まれた。
後輩たちがピンチ脱出に貢献!運も味方につけた
とはいえ、内心は逃げる立場のプレッシャーに、苦しめられてもいた。3打差2位でスタートした嘉数光倫が、1番、2番のバーディーで一気に1打差まで差を詰めてくる。続く3番で、堀川はティーショットをプッシュアウトして右の林にぶち込んだ。
最初に見つけたボールは自分のものではないのに気づき、周辺を捜索。その時、ピンクのユニフォームに身を包んだ後輩が、堀川のボールを見つけてくれた。誤球とロストボールのピンチから脱し、ラフからの第3打をピンに寄せてパーセーブした。
「3番でパーが取れた後はドロー系を使うのをやめ、フェード一辺倒に切り替えた」という堀川。その後は5番、7番とバーディーを奪い、着々と2位との差を広げていった。だが優勝には越えなければならない、もう一つのヤマがあった。
14番のパー3。堀川はティーショットをグリーン左の奥に外してしまった。アプローチはカップをオーバーすると強烈なダウンヒルのために止められず、ボールは手前の花道まで転がり出てしまう。3打目がカップをのぞきながらオーバーしてしまい、下りのボギーパットも入らない。痛恨のダブルボギーを叩き、追ってくる日大の後輩・吉田泰基との差は「3」まで縮まった。
だが、次の14番で大きな幸運が舞い込んだ。ティーショットは行ってはいけない左のラフへ。ダブルボギーの後だけに、大叩きへの危険も秘めていた。しかし、このラフに入ったボールが排水溝からの救済を受けられることになる。ラフからではなくドロップしたフェアウェーから第2打を打つことができ、このホールをパーでしのいだ。
ダボの後、ボギーとなれば傷口はさらに広がるところ。大事な場面で運も味方した。続く16番では奥のラフから、チップインバーディー。通算15アンダーとなり、優勝はほぼ固まった。
第二の故郷に錦 後輩たちに強烈なメッセージ
10センチのウィニングパットを決めると、笑顔が弾けた。
プロ仲間が待ち受け、ペットボトルのウォーターシャワーが堀川の頭上に注がれた。最終組の一組前で回り、3位に入った吉田も日大の出身。祝福の輪に加わっていた。先輩の晴れ姿を見て、「すごい。こういう人になりたいなと思いました」と素直に感動を口にした。
優勝スピーチで堀川は、三島を「第二の故郷」と語った。ここで過ごしていた日大3年時には、1度はプロをあきらめかけ、本格的に就職活動も行ったという。それでも今大会の会場となったグランフィールズCCで、キャディーのアルバイトをしつつ腕を磨いた。卒業後もずっと日大のコーチに名を連ね、オフは後輩ともラウンドした。
「一緒にやるとたまには負けたりすることもある。そんな僕でも優勝できるということを、見せれてうれしいです」
後輩たちよ、君たちにもできる。堀川は最終日の逃げ切り優勝を通して、後輩たちに強烈なメッセージを送った。