近年、若手の台頭が目立つ女子ゴルフ界ですが、6人が初優勝を飾ったJLPGAツアーに象徴されるように、特に今年は若い力の活躍が見られました。今年も盛り上がったの女子ゴルフの10大ニュースを、Golf M編集部が独断で選んでみました。
1位 37年ぶり2人目の快挙!馬場咲希が全米女子アマ制覇
今年の女子ゴルフ界で一番のビッグニュースは、122回という長い歴史を持つ全米女子アマチュアゴルフ選手権で、弱冠17歳の馬場咲希が優勝を果たしたことではないでしょうか。日本勢としては、1985年の服部道子以来、37年ぶり2人目の快挙でした。
馬場は36ホールのストロークプレーで争う予選ラウンドを34位で通過し、上位64人による決勝トーナメントに進出。準決勝まで全5戦を勝ち抜き、決勝ではモネ・チャン(カナダ)との36ホールのマッチプレーに臨みました。
馬場選手は序盤からリードを築き、7UPで前半の18ホールを折り返すと、後半も勢いはそのまま。27ホール目でバーディを奪い勝負あり。11&9という圧勝で、歴史的偉業を手にしました。
2位 米ツアー参戦の古江彩佳がルーキーながら初優勝
今季から米ツアーに参戦した古江彩佳が早くも初優勝を飾ったのが、英国で7月末に行われたスコットランド女子オープン。米欧両ツアー共催の試合でした。
古江は最終日に62を叩き出す猛チャージに成功。通算21アンダーまでスコアを伸ばし、首位に4打差の9位から、米ツアー初優勝を逆転で果たしたのです。
3位 山下美夢有が記録ずくめの女子プロナンバー1に
今季の国内女子ツアー後半戦の話題を独占したのは山下美夢有でした。
勝利数は5ながら、年間最優秀選手賞、平均ストローク1位、賞金ランク1位など5冠に輝きました。山下は、「序盤戦の調子は良くなかったが、体のことを一番に考えて頑張ったのが良かったのでは。こんなに賞を頂けるとは思っていなかった」と喜びを表現していました。
4位 勝みなみ、西村優菜がUSLPGAメンバーに
12月に行われた米国女子ツアーの来季出場権をかけた予選会(Qシリーズ)は、勝みなみがトータル24アンダーの5位でフィニッシュし、出場権を獲得しました。
西村優菜はトータル15アンダーの24位タイで終戦。45位までに与えられるツアーメンバーの資格は得たものの、前半戦のフル出場権が得られる目安の20位内には残れませんでした。1次から勝ち上がった識西諭里は、トータル1オーバーの75位で出場権獲得はならず。トータル29アンダーで首位通過を果たしたのは、韓国のユ・ヘランでした。
5位 「せごどん」こと西郷真央が10戦5勝のロケットスタート
今年の国内女子ゴルフ界は、「せごどん」の大暴れによって景気よく幕が開けました。
5月下旬のブリヂストンレディスオープンまでの10試合で5勝と、勝率5割の快進撃。今季、あと何勝するのかと誰もが固唾を飲んで見守りましたが、その後は海外遠征などで忙しくなり、優勝はなし。後半は大スランプとなり、特に最終戦のリコーカップでは、4日間で35オーバーを叩く大乱調でシーズンを終えることとなってしまいました。
まさにジェットコースターのような1年を送った西郷がどんなオフを過ごすのか。強い西郷の復活を、多くのファンが期待しています。
6位 渋野日向子が全英で3位に!
2019年全英女子オープン優勝の渋野日向子が、同大会2勝目に限りなく近づき、話題となりました。
舞台は、2016年には女性会員受け入れを拒否し、全英オープンの開催コースから外れながら、翌2017年に初めて女性会員を受け入れることを決めたスコットランドのミュアフィールド。ここで女子メジャーが開催されるという、歴史的に大きな意味を持つ大会でした。
米ツアーのルーキーとして臨んだ渋野選手は、棄権を挟んで6試合連続予選落ちと苦しむ中で迎えた全英で、初日に65でプレーして単独首位に立ちます。
2日目はショットが安定せず、2つスコアを落として7位に後退しますが、3日目に66を出して再び2位に浮上。最終日は南アのアシュリー・ブハイ選手と最終組で優勝争いを繰り広げました。
一進一退の戦いとなりましたが、最終的にはブハイ選手と、先に上がったチョン・インジ選手に1打及ばず通算9アンダー。プレーオフに残れず、3位に終わっています。
惜しいところで2つ目のメジャータイトルを逃した渋野選手でしたが、実はブハイ選手とは2019年の全英で勝った時にも同じ組で優勝争いを演じています。渋野選手が勝った瞬間、心からの拍手を送ってくれた相手がブハイ選手だったのです。
今年は1打及ばなかった渋野選手ですが、ブハイ選手が18番でパーパットを沈めてプレーオフを決めた後、応援するように声をかけたシーンが印象的でした。ライバルでありながらリスペクトし合うトッププレーヤー同士の絆が、ブハイ選手の初優勝を呼び込んだと言ってもいいでしょう。
2022年は、安定したプレーができず苦しい戦いが続いた渋野ですが、来季は米ツアー2年目。どっしりと構えたプレーが見られるかもしれません。
7位 岩井ツインズ・明愛&千怜が史上初の姉妹シード
双子プロとして注目を集めた岩井姉妹(明愛、千怜)が、JLPGAツアー史上初めて、姉妹同時にシード権を獲得しました。
2021年のプロテストに合格した岩井ツインズは、明愛がQTランキング70位、千怜が90位だったため、いずれも前半戦の出場権はあまりないまま2022年シーズンに臨みました。
それでも、主催者推薦などで結果を出して、第1回リランキングでは30位、33位となって中盤戦への出場権を獲得。千怜は、8月のNEC軽井沢72、CATレディスと2試合連続優勝を飾りました。明愛は優勝にこそ手が届きませんでしたが、メルセデスランキング40位で来季のシード権を獲得しています。
これまでJLPGAツアーには、いずれも優勝経験がある福嶋晃子、浩子姉妹や、福美、里美、明美の谷三姉妹など、多くの姉妹選手がいましたが、同時にシード権を獲得したのは岩井姉妹が初めてです。2人は、来季も揃ってツアーをにぎわせてくれることでしょう。
8位 ベテラン金田久美子&藤田さいきが11年ぶりの復活V
若い選手が次々と活躍する中で、ベテランの粘り強さも光った1年でした。10月の樋口久子・三菱電機レディスで優勝したのは金田久美子。2011年フジサンケイレディス以来、11年189日ぶりの2勝目です。
かつて「天才少女」と言われた金田ですが、最近はなかなかシードが取れない中で踏ん張り続けていました。
2022年はQTの順位も87位とふるわず、出場できる試合が限られる中でスタート。それでも推薦で出場した試合で上位に入るなどして、第1回リランキングで18位となってその後の出場権を獲得。その末に33歳で涙の復活優勝を飾っています。
もう1人、藤田さいき選手の粘りも忘れるわけにはいきません。
2018年、2019年はシードが取れませんでしたが、2020-2021年にはQT19位から試合に出場して賞金ランキング28位でシード復帰。2022年は何度も上位に顔を出しながら、プレーを続けていました。
それが最高の結果になったのは、11月の大王製紙エリエールレディス。こちらも11年35日ぶりのツアー6勝目でした。優勝の2日後には37歳の誕生日を迎えた藤田ですが、来季もまだまだ活躍してくれそうです。
長い間競技ができるゴルフというスポーツの良さを体現してくれたベテラン2人の活躍は、若い選手たちにもさまざまな将来をも見せてくれたに違いありません。
9位 ベテラン勢が続々QTを回避
年々、入れ替わりが激しくなるJLPGAツアーですが、今年は実力者が3人、QTへの出場を回避したことが話題になりました。横峯さくら、有村智恵、成田美寿々。それぞれ理由はまったく違いますが、QTに出ないという選手にとっては重い選択をしたのです。
ツアー23勝で、2009年の賞金女王でもある横峯さくらは、2021年2月に第一子を出産。5月に早くもツアーに復帰して、優勝争いにも顔を出したのですが、シード獲得はできませんでした。QTに行かない理由としては、「トレーニングに時間をかけ、環境を整えるため」。主催者推薦で出場できる試合で結果を出し、リランキングで上位に入り、先へとつなげる作戦です。
推薦がもらえる可能性が高い人気選手だからこそできる選択ではありますが、復帰が早かったこともあり、じっくりと構えてこの先も戦い続ける気持ちが伝わってきます。
子どもが欲しい、ということを明確に宣言したのが有村智恵です。
元々、子どもが欲しいという気持ちが強かった有村は、2021年に一般人男性と結婚。35歳という年齢もあり、優先順位を「妊活」に置いての決断です。アスリートにとって難しい妊娠、出産という課題に立ち向かう姿勢には、後輩たちも注目しています。
成田美寿々がQTを受けなかった理由は休養です。
ツアー13勝の実力者ですが、2019年に2勝したのを最後に、優勝とは縁がありません。故障から不調に陥り、2020-2021年は賞金ランキング102位でシード落ち。2022年はステップアップツアーでもプレーしましたが、いい結果は出られず苦しみました。
シーズン終盤に自身のSNSで、「来年度から少しツアーを離れて休養をすることに決めました。期間は決めていません」と発表。「引退というわけではなく、もう一度立ち上がるための前向きな休養です」とも続けています。
それぞれ、理由は違いますが、ツアーに追われる日々から少し距離を置き、違う角度からゴルフの良さと向き合って、またツアーに戻ってきてくれる日を待ちたいものです。
10位 JLPGA賞金総額が史上初の50億円大台突破
12月末に来季のJLPGAツアースケジュールが発表されました。
レギュラーツアーは今年と変わらない38試合ですが、下部のステップアップツアーが2試合増えて21試合となりました。
これに、45歳以上のレジェンズツアーや新人戦などを合わせたJLPGAトーナメントすべての賞金額は、50億8850万円。今年55周年を迎えたJLPGA史上初めて50億円を超えました。
次々に新しい選手が出てきて活躍する新陳代謝の中、特筆すべき数字だと言っていいでしょう。