米ゴルフ界のスーパースター、フィル・ミケルソンの粋な返答【舩越園子 ゴルフの泉】

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新ツアーに参戦したフィル・ミケルソン(写真はLIVゴルフインビテーショナル ロンドン) 写真:Getty Images

最近、新ツアーへの参戦問題で世間をにぎわせているフィル・ミケルソンですが、長年にわたって米ゴルフ界の象徴であり続けたスーパースターです。前回、セルジオ・ガルシアへ人種差別的な言動を行った一般のギャラリーを、ミケルソンのキャディーが勇気ある言動でたしなめた話を紹介しましたが、今回は、その1件に対するミケルソンのスーパースターたる返答の話です。

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アメリカのスーパースター、フィル・ミケルソンの返答

 アメリカツアーの試合中、ギャラリー男性がスペイン人選手のセルジオ・ガルシアに、「アメリカはオマエが嫌いなんだよ、ガルシア」と人種差別的な野次を投げつけ、ガルシアと同じ組で回っていたフィル・ミケルソンのキャディー、ジム“ボーンズ”マッケイが、そのギャラリー男性に、「誰に対しても尊敬の気持ちを持て。ゴルフの会場で、あんな言葉を吐くのはアメリカの恥だ」と言い返した話を前回ご紹介しました。実を言えば、あの話には続きがありました。

 ラウンド後、アメリカのメディアに囲まれ、野次をとばした男性のことを尋ねられたミケルソンの返答は、男性をその場でたしなめたミケルソンのキャディーのボーンズより、一枚上手だったのです。

 「あれは、ひどい一言だった。でも、よくよく考えれば、あれは、たった1人のギャラリーが、たった1回だけ吐いた暴言であって、この試合会場に来てくれている大勢のギャラリーは、あの野次男性以外は、みんな素晴らしい人々だ。あの出来事によって、この素晴らしいギャラリーと素晴らしいトーナメントを台無しにはしたくない。だから僕は、もうこれ以上、この出来事について、とやかく言いたくはない」

ミケルソンとキャディーの機転と優しさ

フィル・ミケルソン(右)とキャディーのジム“ボーンズ”マッケイ(写真は2008年のスコティッシュオープン) 写真:Getty Images 

 見事な返答ぶりは、圧巻でした。さすが、ゴルフのアンバサダーと呼ばれるだけのことはある。誰に対しても優しく、誰に対しても公平。そんなミケルソンだからこそ、彼は長年、アメリカのスターであり続けているのだろうと思いました。

 人種差別的な野次を飛ばした行為は「アメリカの恥」。それをすぐさまたしなめたミケルソンのキャディーの行動は「アメリカの勇気」。そして、野次男性ではなく、その場に居合わせた大勢のギャラリーを気遣ったミケルソンは、「アメリカのスター」。

 悲しい出来事は、そんなミケルソンとキャディーの機転と優しさで、ずいぶん救われました。

文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)

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