飛ばし屋・河本力が姉・結に捧げるツアー初優勝!

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ツアー初優勝を飾った河本力 写真:JGTO images

◆国内男子プロツアー<SansanKBCオーガスタゴルフトーナメント2022 8月25日~8月28日 芥屋ゴルフ倶楽部(福岡県)7191ヤード・パー72>

国内男子プロゴルフのSansanKBCオーガスタ最終日は、首位に1打差の2位でスタートしたルーキーの河本力(22)が、2アンダーで回り通算16アンダーにスコアを伸ばし、逆転でツアー初優勝を飾った。1打差の2位にはイ・サンヒ(韓国)が入った。

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姉・河本結に最高の誕生日プレゼント!

優勝インタビューで涙を流す河本力 写真:JGTO images

 「姉は明日が誕生日。いい誕生日プレゼントになったと思います」。

 優勝直後のインタビューで、河本は涙をぬぐいながらこう語った。8月29日に誕生日がやってくるのは、この日遠く離れた北海道・小樽カントリー倶楽部でニトリレディスに出場していた1歳違いの姉だった。

 自慢の姉。だが同業であるが故の、複雑な思いもあった。

 前日、大会3日目の放送中に、実況アナが河本の姉がプロゴルファーであることについて触れると、解説のJGTO・青木功会長が、河本の思いをこう代弁している。

 「(女子プロの河本結の弟と)言われたくないから、早く勝ちたいと言っていた」。

 だが、最もプレッシャーがかかる最終日の前夜、翌日の心構えとして「楽しんで♡」とメールを送って来てくれたのも姉。

 2018年にステップ・アップ・ツアーで4勝を挙げ賞金女王となり、2019年のアクサレディスでツアー初Vを飾っているプロの先輩ならではのアドバイスとも言えた。

誰もが乗り越えなければならない初優勝への重圧

 とはいえ、姉のアドバイス通りに楽しめるほど、優勝は易しくなかった。

 首位のイ・サンヒに1打差の14アンダーでスタートした河本は、6番のバーディーで並ぶと9、10、12番のバーディーで16アンダーまでスコアを伸ばす。残り6ホールの時点で2位に4打差をつける単独首位。完勝ムードまで漂い始めた。

 だが、この後、イ・サンヒの反撃が始まった。13、14番の連続バーディーで2打差に詰まる。

 そしてむかえた16番で、イ・サンヒが右9メートルのフックラインを決めてバーディー。一方の河本は、1.2メートルのパーパットを決められずボギーとし、再び15アンダーで並んでしまった。

最終18番は絶対バーディが獲れる自信があった

優勝を決めるパットを決めガッツポーズ 写真:JGTO images

 17番も両者はともにパーで譲らず。最終18番は打ち下ろしの556ヤードのパー5。

 323.75ヤードでドライビングディスタンス第1位の河本にとって、フェアウェーさえキープすれば、第2打はアイアンで2オンを狙えるチャンスホール。

 オナーはイ・サンヒ。アゲンストの風の中、ドライバーを振りぬいたイ・サンヒの顔に動揺が走る。ギャラリーに左の方向へとボールが飛んでいることを知らせるため、ティーイングエリアの右端まで移動しながら左手を高々と上げた。

 ボールは大きくフックして左のカートパスに大きくはねる。OBにこそならずに済んだが、左の斜面に止まる大トラブルとなった。

 一方の河本は、確実にティーショットをフェアウエーに置いた。

 イ・サンヒは、つま先上がりの斜面からの第2打をグリーン手前のバンカーまで運ぶのがやっと。残り約220ヤードと2オン可能な場所だけに、河本が有利な立場だったが、ここでさらなるドラマが起こる。

 アゲンストの風の中、今度は河本が第2打をプッシュアウトし、ギャラリーの人ごみの中にボールを打ち込んでしまった。これでまた、勝負の行方は混とんとしてくる。

 第3打はまず河本から。右の林の中から、ピッチエンドランでうまくピン手前約3メートルまで転がしてくる。
 イ・サンヒは、バンカーからピンをオーバーさせて、上り4メートルのバーディーパットを残すことに成功した。入れたら有利になる展開で、イ・サンヒはこのパットを決められない。

 一方、河本はスライスラインを見事に読み切ってバーディー。最後の最後で、ツアー初優勝をつかみ取った。

ウィニングパットはすごく緊張して、震えた

 「(レギュラーツアーでは)最終日最終組が初めてで、こんなに苦しいものだとは知らなくて、(ウィニングパットは)すごい緊張して、すごい震えてました」と、すさまじい重圧に苦しめられていたことを告白してから、こう続けた。

 「サポートしてくれた人がいなければこの優勝はないので、関わってくれているすべての人に感謝したい」。さらに、家族への感謝の言葉も付け加えた。「まず最初にお父さん、お母さんに電話したい」。

 これでツアーでは、中嶋常幸(48勝)と妹のエリカ(4勝)、クリス・キャンベル(1勝)と妹・ニッキー(1勝)、宮里聖志(1勝)と弟の優作(7勝)と妹の藍(日米欧通算24勝、国内15勝)、香妻琴乃(1勝)と弟・陣一朗(2勝)に続く、5番目の「きょうだい優勝」(JGTOのHPより)となる。両親にとっても、うれしい優勝となったに違いない。

 さらに最後には、「いずれアメリカのメジャーで優勝したいと思っているんで、ぜひ応援よろしくお願いします」と高らかにメジャー制覇を宣言。

 海外でも通用するパワーを備えた大器が、同郷のビッグネーム・松山英樹の背中を追い、大きな夢に向けてその1歩を踏み出した。

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