今回はある一冊の本のチャリティ精神に感銘を受けたお話。アメリカという国のチャリティに対する姿勢を、改めて感じさせてくれました。
タイガーのお気に入りは「タイ風焼きそば」
1993年に渡米した私は、その後、アメリカツアーの試合会場に頻繁に足を運ぶようになり、そのたびに、いろいろなコトやモノに出くわすようになりました。
1990年代の終盤、クラブハウスの前に1台の長いテーブルを置き、そのテーブルの上に本を積み上げてギャラリーに売っている女性たちに遭遇しました。「何の本ですか?ちょっと見せてもらえますか?」 そう言いながら、一番上にあった本を手に取った私は、ページをめくって驚きました。
まず視界に飛び込んできたのは、タイガー・ウッズの母親クルティダのおすすめ料理として記された「タイ風やきそば」。その次は、ジャック・ニクラスの愛妻バーバラ夫人の自慢の一品。一緒に料理をしている選手のエプロン姿の写真も、あちらこちらに散りばめられていました。
そう、その本は写真が満載された料理の本だったのですが、それぞれの料理は、アメリカツアーの選手の妻や母親たちが、自分の得意料理をレシピと写真で紹介していた本だったのです。
それにしても、クラブハウス前の一角で、こうして本を積み上げ、ギャラリーに販売している女性たちは一体何者なのだろう?そう思って、ストレートに尋ねてみたら、彼女たちも選手の妻だと知らされて、私はさらにビックリ。1人の女性がこう教えてくれました。
チャリティに対する意識の高さに感服
「私たちはPGAツアー・ワイブズ・アソシエーションという妻たちの会のメンバーです。この本は5年の歳月を費やして1万5000部ほど制作しました。1冊20ドルで販売し、売り上げは全部チャリティとして寄付します。1試合で50冊売るのが目標。木曜日に売れ残ったら金曜日も土日も売ります。私たち選手の妻はチャリティのためなら喜んで頑張ります」
その甲斐あって、料理の本は飛ぶように売れていました。彼女たちのチャリティ精神に感動を覚えた私も、思わず1冊、購入しちゃいました。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)