◆国内男子プロツアー<パナソニックオープンゴルフチャンピオンシップ2022 9月22日~9月25日 小野東洋ゴルフ倶楽部(兵庫)7113ヤード・パー72>
男子プロゴルフのパナソニッックオープン最終日は25日、小野東洋GCで最終日が行われた。
首位に3人が並び、1打差に2人、2打差に4人がひしめく大混戦から抜け出したのはアマチュアの蟬川泰果(せみかわ・たいが=東北福祉大4年)。
13番からは5連続バーディーを奪うなど「66」で回り、通算22アンダーで優勝。前年大会の中島啓太に続き、ツアー史上6人目となるアマチュア優勝を達成した。2位には1打差で岩﨑亜久竜が入った。
涙、涙の優勝シーンの裏側にあった想像を絶するプレッシャー
ウィニングパットを決める前から、すでに泣き顔になりかかっていた。
2メートルのパーパットを外したせいで、帽子を取って、誰かに謝っているのだろうか。そんな勘違いをしたギャラリーが、少なからずいたに違いない。
実はこみ上げる涙を隠そうとする、感情の発露であったことがこの後分かる。タップインで優勝が決まると、その目からとめどなく涙があふれ出た。
実は17番、パー3で5連続バーディーを奪った時点で、すでにウルウルとしていたという。それは裏を返せば、優勝への重圧がそれほどすさまじかったから。
先週のANAで劇的な優勝を飾ったばかりの大槻智春、大ベテランの宮本勝昌と16アンダーで並んでの最終日最終組。トップグループは2打差に9人がひしめく大混戦で、誰が勝ってもおかしくない展開。アマチュアの蟬川が緊張に苦しむのも当然の成り行きと言えた。
後輩キャディーの助けで緊張を跳ね返す
スタート直前には、手に汗が噴き出していたという。その直後、1番のティーショットは大きく左に曲がる。
優勝直後のインタビューでも、「ティーショットを打つと、緊張が出てきた」と本人もそれを告白している。だが後輩キャディーの激励で、自分を取り戻した。
「(キャディーの)中村君が励ましてくれたんで、地に足が着いた感じで回れた」との言葉通り、2番3番の連続バーディー。
一度は単独首位に立ったものの、このあと後続組が追撃体制に入る。
6位からスタートした小田孔明が、1、2、8、9番と2つの連続バーディーで通算18アンダーまで急上昇。さらに13番のバーディーで19アンダーと、単独首位に躍り出た。
4位グループの岩﨑亜久竜と桂川有人も負けてはいない。快調にスコアを伸ばし、共に11、12番と連続バーディー。この時点で19アンダーとなり、首位に並んでいた。
9番のボギーで一度は首位を明け渡してしまった蝉川だが、10番でバーディーを取り返すと、13番から立て続けにパットを決め5連続バーディー。混戦から一気に抜け出した。
プロの先輩たちが、そのチャージに顔色をなくして置いて行かれた。
2年連続、アマチュアが優勝
それにしても、アマチュアがプロの試合で勝つことが、それほど珍しくなくなったことは隔世の感がある。男子のツアー制度施行(1973年)以降初めてアマチュアとしての優勝を倉本昌弘が成し遂げた時は、大変な偉業として評価された。
というのも、それまでプロが出場したオープン競技における優勝者は、わずか2人しかいなかったからだ。
最初に優勝したのは1927(昭和2)年、日本オープンの初代チャンピオンである赤星六郎。そのあとは実に40年後の1967(昭和42)年、西日本オープンの中部銀次郎まで達成者は現れていない。それから13年後の1980(昭和55)年、中四国オープンで倉本の偉業となるわけだ。
それから27年後の2007(平成19)年、マンシングウエアオープンKSBカップでの石川遼、わずか4年後に2011(平成23)年の三井住友VISA太平洋マスターズでの松山英樹、8年後となる2019(令和元)年の同大会での金谷拓実と続き、今回のパナソニックオープンにおける中島啓太と蟬川の連勝に至るわけだ。
アマチュアのレベルアップは喜ばしいことで、蟬川の優勝は讃えられてしかるべき。しかしプロたちのレベルはどうなのか。深刻に受け止める必要がありはしないか。