このところゴルフ場に電車で行く人が増えています。電車ゴルファーにとってクラブバスの運行があると便利です。でも、ゴルフ場予約サイトを見ると、クラブバスの運行がないゴルフ場もけっこうあります。なぜゴルフ場によって対応が異なるのでしょうか。
平成に入って経費削減でクラブバス廃止のゴルフ場が増えた
昭和の時代は、ゴルフ場の最寄り駅からクラブバスを運行するのが主流でした。
なぜならば近隣のゴルフ場がクラブバスを運行しており、自分のゴルフ場がクラブバスを運行していなければ、電車ゴルファーは当然、クラブバスを運行しているゴルフ場を選びます。集客にとって必要不可欠なアイテムでした。
メンバーシップコースではメンバーからの需要もありました。以前は、ラウンド後にメンバー同士がクラブハウスでお酒を飲みながら交流を深める文化が活発でした。心置きなくお酒を飲んでもらうために、クラブバスを運行していました。
ところが1990年代に入ってバブル経済が崩壊すると、多くのゴルフ場は収益が悪化しました。収入が減ったので支出も減らさなければならないということで、クラブバスの利用者が少ないゴルフ場は運行を廃止しました。
2000年に貸切バスの規制緩和が施行されたため、クラブバスを廃止する代わりに、都心部からゴルファーを送迎するバスパックを充実させるゴルフ場が増えました。
令和に入ってクラブバス需要が高まり運行復活のゴルフ場も
ところが2012年4月に発生した関越自動車道高速バス居眠り運転事故によって、高速ツアーバス等貸切バスの安全規制の強化に舵を切ったため、ゴルファー向けのバスパックは運転手の確保が難しくなり、断念せざるを得なくなりました。
ゴルフ場は、交通手段をゴルファーに委ねるしかなくなりました。車で来てもらうか、最寄り駅からタクシーで来てもらうという状況になりました。
2000年代から2010年代は、都市部を中心に車離れが加速した時期でもありました。昭和の時代は一家に一台、車を所有することがステイタスでしたが、車の購入費と維持費にお金をかけるなら、そのお金を別のことに使いたいと考える人が多くなりました。
さらに、高齢者は運転免許証の自主返納に対する家族の要望が強くなるような出来事もありました。車の運転を卒業するということは、自分の運転でゴルフ場に車で行くことができなくなることを意味します。
このような時代背景で車を持たない人、免許を持たない人が増えてきたので、令和に入ってからクラブバスへの需要が高まっています。
そのことに気づき、予算が確保できたゴルフ場は、クラブバスの運行を復活させています。
かつてゴルフ場の来場者の9割以上は車で来ていると言われていましたが、現在はもしかしたら電車での来場者が2~3割を占めるコースもありそうです。
だからと言ってすべてのゴルフ場がクラブバスの運行を再開するとは思いませんが、電車でのアクセスがよくてクラブバスを運行しているコースのニーズは確実に高まっています。
文/保井友秀