ゴルフ場に初めて足を踏み入れるゴルファーは、グリーン上でカップの跡を見つけたことで、カップの位置が毎日替わることを知る人も多いようです。今回もコースデビューのゴルファーに必ず質問されるゴルフ場の仕組みをご紹介します。
カップの位置を毎日替える一番の理由は芝生の保護
ゴルフを始めたばかりの人は、カップの位置はホールによって決まっていると思い込んでいることがあります。その人がグリーン上でカップの跡を見つけると、「もしかして昨日はこの場所にカップがあったの!?」と驚きの表情を浮かべます。
1つのグリーンにはカップ跡がだいたい2~3個あります。前日のカップ跡、2日前のカップ跡、3日前のカップ跡くらいまで跡が残っています。
でも、その存在に気づかない人もいます。なぜならば、プレー当日のカップ位置とは離れた場所にカップ跡があるからです。
カップ位置を毎日替えるのは芝生の保護のためです。ゴルフ場のグリーンは、芝生にとって過酷な生育条件です。本来であれば葉っぱを長く伸ばしたいのに、人間の都合で短く刈り込まれます。
しかも、その状態で1日200人くらいのゴルファーに踏まれます。これは芝生にとって、ものすごいストレスになります。
特に、カップ周辺の芝生はたくさん踏まれますから、そのエリアの芝生を休ませるために、翌日は離れた場所にカップが設置されることが多くなります。前日がグリーンの右側だったら、翌日は左側、前日が手前側だったら、翌日は奥側といった具合です。
カップはグリーンの地面を円柱状にくり抜いて設置します。その穴にホールカップという金属製の円筒を埋め込みます。
ホールカップの直径は4.25インチ(10.8センチ)、深さは4インチ(10.16センチ)以上と決められています。プレーしているときはカップがものすごく小さく見えますが、直径10.8センチは日本酒の一升瓶の直径とほぼ同じです。
そしてホールカップを地面に埋め込む際は、グリーン面よりも1インチ(2.54センチ)以上深く埋め込まなければならないという規則があります。けっこう太くて深い穴を開けているのです。
くり抜いた円柱状の地面は、翌日にホールカップを引き抜いた跡の穴を埋めるため、そのままの状態で保管されています。なので、グリーンの地面はけっこう頻繁にあちこちに移し替えられています。
ホールの難易度に変化をつけるのもカップ位置変更の目的
カップの位置を毎日替える一番の理由は芝生の保護ですが、ホールの難易度に変化をつけるのも目的の一つです。
同じグリーンでもカップの位置が替わると印象がガラッと変わります。花道を狙って打てばピンに寄るポジションと、バンカー越えを狙わないとピンに寄らないポジションでは、難易度がまったく異なります。
プロのトーナメントでは、初日から最終日まで定番のピンポジションが決まっていたりしますが、一般営業のゴルフ場にも定番のピンポジションがあります。
例えば、土日は来場者が多いので、プレーの進行がスムーズになるように、花道を狙って打てばピンに寄るポジションにカップを切ることが多いです。そうすると月曜日はそのエリアの芝生を休ませますから、必然的に難しい位置にカップを切ることになります。
また、天気予報が雨のときは、高低差のあるグリーンの高い位置にカップを切ります。水は高いところから低いところに流れますから、カップを含めカップの周辺に水が溜まらないように高い位置に設置するわけです。
カップ位置を決めるのはコース管理スタッフのボスであるグリーンキーパーです。ただ、傾斜のキツい場所にカップを切ると、ボールが真上を通ってもカップに入らない可能性がありますから、カップを切る場所は限られます。
グリーンの大きさにもよりますが、グリーンを6分割してローテーションするのが一般的です。左手前、左中、左奥、右手前、右中、右奥といった感じに分け、ゴルファーが歩くエリアを分散させます。
カップ位置にはゴルフ場の意思や狙いがありますから、「今日はどうしてこのカップ位置なのだろう?」と考えながらプレーすると、スコアメークのコツがつかめるようになるかもしれません。
文/保井友秀