アメリカツアーで一度も優勝していないのに、生涯獲得賞金の総額がとんでもない高額になる選手がいます。35歳のアメリカ人選手、キャメロン・トリンガーリもその一人です。今回は、トリンガーリのようにビッグマネーを手に入れることができるPGAツアーの現状についてのお話です。
スケールが違うPGAツアーの賞金額
アメリカツアーの賞金が年々高額化していることは、日本のゴルフファンの間でも知られていますが、一体どのぐらい高額なのかという話になると、スケールが大きすぎるせいか、なかなかピンと来ないのではないでしょうか。
たとえば、シーズン終盤のプレーオフ・シリーズ最終戦、ツアー選手権で優勝すると、年間王者となって約15ミリオン(約20億4000万円)のビッグボーナスを手にすることができます。まさに夢のような話。それが現実になるのが、アメリカツアーという場所なのです。
一方で、アメリカツアーには、これまで1度も優勝できていないのに、稼いだ賞金の総額が10ミリオン(約13億6000万円)を超えている選手が何人もいるというのです。この事実には、とにもかくにも驚かされます。キャメロン・トリンガーリもその一人です。
未勝利でもミリオンダラーになれる夢の舞台
トリンガーリはジョージア工科大学を卒業し、2009年にプロ転向。以後、アメリカツアーで何度も優勝争いに絡みましたが、いまなお未勝利。しかし、優勝を逃しても2位や3位になれば、それなりの高額賞金が授けられるため、彼がこれまで稼いだ賞金の総額は、すでに17ミリオン(約23億2000万円)を上回っています。
2021年、最終日を最終組で迎えた10月始めのサンダーソン・ファームズ選手権では、トリンガーリがまたしても惜敗したら、当時史上初の「未勝利で15ミリオン超え」という驚異的な記録が達成されると見られていました。再び惜敗したら達成される新記録が注目されているというのは、あまり気持ちのいいことではなかったのですが、優勝を逃しても、すごい高額賞金がもらえるのですから、やっぱり夢のように気前のいい話です。
さて、結果はどうなったのか?トリンガーリは、またしても優勝を逃し、惜敗ではなく、大きく崩れて11位タイに終わったため、史上初の15ミリオン超えは、お預けとなりました。しかし、その3週間後、日本で開催されたZOZOチャンピオンシップでは松山英樹に次ぐ2位となり、ついに15ミリオンを突破して新記録を達成しました。
勝てずとも、長年、シード選手として米ツアーに留まり、優勝争いに絡み、大金を稼ぎ続けるのは大変なことです。忍耐と努力と鍛錬の証が生涯の獲得賞金だと考えれば、「未勝利で15ミリオン超え」は素晴らしい新記録です。
知名度が決して高いとは言えないトリンガーリが、優勝せずとも15ミリオン、約20億円を上回る大金を稼ぐアメリカツアーは、やっぱり夢のような場所です。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)