◆国内女子プロツアー<日本女子オープンゴルフ選手権 9月29日~10月2日 紫カントリークラブ・すみれコース(千葉県) 6839ヤード・パー72>
申ジエが、日本でのグランドスラムをあと一歩のところで逃した。
勝みなみの逆転優勝で幕となった第55回日本女子オープンの最終日は、勝、申、吉田優利の3人が残り3ホールで首位に並ぶ展開となった。明暗を分けたのは、17番の攻略だった。
全米女子アマ優勝の馬場咲希は、11位タイでローアマを獲得している。
申ジエ、悲願の大会制覇ならず
申ジエの大会初制覇は、あと一歩のところでかなわなかった。
2008年、2012年と全英女子オープンに優勝し、米ツアー賞金女王の経験もある申。日本では通算26勝を挙げており、うち4勝が公式戦だ。公式戦の中で未勝利の今大会に優勝すれば、日本での“グランドスラム”達成となる。
2012年から出場を続け、過去10回でトップ10入りは3回。最も惜しかったのは、畑岡奈紗が連覇を果たした2017年。畑岡と2打差で最終日の逆転を狙ったが、勢いのある畑岡に8打差をつけられ、2位に終わっている。
この日は通算2アンダーで吉田優利に1打差の単独首位で臨み、フロントナインは3バーディー、1ボギー。冴えわたるショットで4アンダーまでスコアを伸ばし、優勝に向かって突き進んでいた。
前半、5つスコアを伸ばした勝に並ばれた後も、貫禄のプレーを続けていたが、バックナインに入って少しずつ、歯車が狂い始めた。
「ピンの位置が複雑なところでした」と、11番、14番でボギー。通算2アンダーで、同じ最終組で回る吉田、前の組の勝と並んで終盤に突入する。
明暗を分けたのは17番だ。前の組で、勝がバーディーを奪った喝采の直後に打ったティーショットはバンカーにつかまる。
アゴは高かったが、「100%出ると思った」とフェアウェーウッドを手にして攻めるが、無情にもアゴに当たってボギー。
「(球がよく)当たり過ぎちゃって。でも、自分は考えた通り、よくできたと思っています」と後悔はない。
プレーオフに望みをかけた18番もバーディー止まりで、通算2アンダーで1打差惜敗。
「勝選手がすごく良いプレーをして勝ったから、自分の中では最善を尽くせたかなと思います。優勝した勝選手に心からおめでとうと祝福したいと思います」。
偉業はお預けとなった。
吉田優利は鬼門17番を攻略できず涙
地元、千葉での大会制覇を狙った吉田優利は、大詰めで自滅した。
1打差2位でスタートすると、8番までに1つ伸ばして通算2アンダー。バックナインに入ってからも、15番までスコアカード通りに忍耐強くプレーを続けた。一時は4アンダーにした同じ最終組の申、前の組の勝が、後半スコアを落としたことで首位に並んだ。
だが、大事な16番でボギーを叩いてしまう。取り戻そうと臨んだ17番では、申と同じバンカーからダブルボギーを叩いて万事休す。18番は何とかバーディーで締めたが、通算イーブンパーの3位タイに終わった。
「4日間とも17番が攻略できなかったので、次の機会はパーで上がりたいと思います」と、初日からボギー、ダボ、ボギー、ダボの鬼門ホールへのリベンジを誓った。
同時に地元優勝に向けて、「これから何回もチャンスがあると思うので、またリベンジしたいと思います」と、気持ちを切り替えた。
ローアマ獲得の馬場咲希は来年の最終プロテストが決定
18番で持ち前の飛距離を炸裂させ、大喝采の中、2オンしてバーディーフィニッシュ。
全米女子アマ優勝の馬場咲希は、笑顔で4日間のプレーを終えた。通算5オーバーで11位タイ。しっかりとローアマを獲得した。
8月に全米女子アマで優勝して以来、注目を集め続けている。今大会ではさらにヒートアップ。大会前の練習日からギャラリーに囲まれた。
予選ラウンドも、ディフェンディング・チャンピオンの勝と、今季5勝の西郷真央が同じ組。終始、衆目の中でプレーしたが、「楽しみたい」と口にし続けた。
最初は予選を通過して4日間プレーすることを目標にし、それがかなってからはのびのびとプレー。トッププロたちも四苦八苦したコースを、粘り強くプレーした。そのことで、「自信がついたと思います」と胸を張る。
9月に日本ウェルネス高校から代々木高校に転校したが、卒業後の進路はまだ決めていない。大学に進学するのか。するなら日本なのか、米国か。それとも進学せずにプロの道を選ぶのか。いずれにしても来年の日本のプロテストを受ける気持ちは定まっている。
日本女子オープンのローアマ獲得によって、いきなり最終テストを受けられることになり、「とても有利だということだと思うので、自信を持って臨みたいと思います」と言い切った。
交通アクセスも良い会場で好天が続いたこともあり、3日目7914人、最終日9417人と週末の決勝ラウンドに入って一気に増えたギャラリーに、「すごくびっくりしました」と驚きつつも、それも楽しんだ。
今後の課題はパッティング。トッププロたちを間近で見て、「ここぞという時にパターを決めてくる。私は決めたいパットをなかなか決めることができなくて…。決めたいパットを決めることができるように(なりたい)」。
全米女子アマ覇者として、初めて臨んだ母国のナショナルオープンで、また一つ成長した馬場の世界は、さらに広がっていく。