メジャーとは選手たちにとって特別な試合です。だからこそドラマが起き、悲劇も起こります。今週からアメリカ女子ツアーの2023年シーズンが開幕しますが、今回はメジャー制覇が期待される畑岡奈紗選手への激励の思いを込めたお話です。
ダスティン・ジョンソンも経験したメジャー制覇までの苦労
2021年の全米女子オープンは、笹生優花選手と畑岡奈紗選手のサドンデス・プレーオフにもつれ込み、優勝したのは笹生選手。畑岡選手は惜敗に終わりました。
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しかし、畑岡選手と同じように、掴みかけたメジャー・タイトルをぎりぎりで逃した苦い経験は、ゴルフ界の先人たちにも、幾度となくありました。
今や世界のトップランカーとして活躍するダスティン・ジョンソンも、そうでした。とりわけ、2010年の全米プロは、この上ない悲劇でした。
最終日の18番で2打目を打つ際、ジョンソンは自分が立っている場所が、コース内に無数に広がる巨大なバンカーの中だったことにまったく気づいていませんでした。その場所は、ギャラリーに踏み固められ、ゴミまで散乱しており、まさかそこがバンカーの中だとは、誰も思わないような状況でした。
諦めず、腐らずに挑戦し続けることの重要性
ジョンソンも、その場所はベアグランド、つまり普通の地面の上だと思い込み、クラブを地面に付けてからショットしたのです。
しかし、ソールと呼ばれるその行為はバンカー内では禁じられており、さあ、これからサドンデス・プレーオフを戦うぞ、勝つぞと意欲を燃やしていたジョンソンは、その矢先、ルール委員から「バンカー内でソールしたから2ペナだ」と言い渡され、目の前のプレーオフ進出は、突然、叶わなくなりました。
よりによって、あんな場所に彼のボールが止まったことは、どうしようもないほどのアンラッキーでした。でも、そんな悲劇を乗り越えたジョンソンは、その後、2016年全米オープンを制してメジャー初制覇を遂げると、2020年はマスターズを制し、世界ナンバー1にも上り詰めました。
今はまだメジャーで勝てそうで勝てていない畑岡選手にも、その迷路から抜け出しさえすれば、光り輝く未来がきっと訪れる。そう信じて、エールを送りたいと思います。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)