◆海外女子プロツアー<アムンディ エビアン選手権 7月21日~7月24日 エビアンリゾートGC(フランス) 6523ヤード・パー71>
ブルック・ヘンダーソン(カナダ)が、バーディーフィニッシュで激闘に決着をつけた。メジャー第4戦、アムンディ・エビアン選手権最終日(現地時間24日)は、首位スタートのヘンダーソンが伸び悩み、西郷真央を含めた後続が追い上げての大混戦となった。ヘンダーソンは最後のバーディーで、新鋭ソフィア・シューベルト(米)を振り切って、2016年全米女子プロ以来のメジャー2勝目を飾った。カナダ人としてのメジャーでの複数回優勝は、男女を通じて初となる。西郷は3位タイに終わっている。
「メジャーはバックナインが勝負」と唱え続けたブルック・ヘンダーソン
呪文のように自分の心に言い続けた言葉を、ヘンダーソンは形にした。「メジャーはバックナインが勝負」と。
通算17アンダー2打差単独首位でスタートしたが、1番でいきなり3パットのボギーを叩いてしまう。
6番ではダブルボギーを叩いて通算14アンダーに後退。西郷をはじめとする先にプレーする面々が、スコアをどんどん伸ばしているのもわかっていた。それでも動じなかったのは、バックナインにかけていたからだ。
最後まで食らいついてきたのは、1組前でプレーするシューベルトだ。米下部のエプソムツアーで1勝とツアーでの実績はないに等しいが、しぶとさを見せる。11番でヘンダーソンがボギーを叩いた時点で、通算14アンダーで追いつかれたが、シューベルトだけではない。その時点で、先にプレーする西郷ら多くの選手が14アンダーで首位を並走する混戦状態になっていた。
それでも「落ち着いてプレーすること。自分に集中してチャンスを生かすこと」を徹底した。
14番、15番で連続バーディーを奪って通算16アンダー。シューベルトは、16アンダーのままホールアウトして待っている。18番パー5、ヘンダーソンのティーショットは大きく左にフックして、レイアップを余儀なくされた。
残り107ヤードの第3打は、左上2.5メートルのバーディーチャンスに。しっかりとヒットしたウィニングパットがカップに吸いこまれた瞬間、その場でひざを折ってしゃがみ込む。抑え込んできたものが、爆発した。
カナダ人初のメジャー複数回優勝を達成
「不思議な1日だった。1日中落ち着いていられた」。
その言葉の裏にあったのが、前述の「メジャーはバックナインが勝負」という鉄則だった。決してベストではなかったゴルフでも、勝つことができた。
2017年、全米女子プロで優勝した時には18歳の若さ。これまで通算11勝を重ねたが、その裏にはキャディを務める姉のブリタニーさんをはじめとする、家族の支えもあった。
今季も「春休み」と称して家族との時間をゆっくりと過ごした。「そこで大事なマインドセットができた」という有意義な時間が、今につながっている。
男子も含めたカナダ人として初めて、メジャーでの複数回優勝を果たしたヘンダーソン。落ち着いて見えるが、まだ24歳だ。「この先が楽しみです」と本人が言うように、さらに勝ち星を重ねていくに違いない。
あと一歩のところで大魚を逃したシューベルト
勝てば大金星。ロレックスランキング283位からメジャー優勝を狙ったシューベルトだったが、あと一歩のところで大魚を逃した。
日本の服部道子も在籍して活躍したテキサス大のゴルフチーム、レディロングホーンズ時代の2017年に、全米女子アマで優勝。翌2018年にプロに転向したが、下部のエプソムツアー1勝の実績しかない。今季は、エプソムからレギュラーツアーに昇格して臨み、つかんだメジャーの出場権だった。
大混戦で、メジャー優勝経験のある実力者たちが、次々に脱落していく中、最後まで優勝の可能性を残したのは、落ち着いてプレーができたから。今回はあと1打に泣いたが、米ゴルフファンの期待を一身に集める一戦となった。
西郷と並ぶ通算15アンダーの3位にリディア・コ(ニュージーランド)、キム・ヒョージュ(韓)ら5人が入り、2打遅れた8位タイには、コ・ジンヨン(韓)、ネリー・コルダ(米)、ユ・ソヨン(韓)らが入った。ほかの日本勢は、畑岡奈紗、西村優菜が通算11アンダーの15位タイ、古江彩佳は通算19アンダーの19位タイに終わっている。