◆海外女子プロツアー<AIG全英女子オープン 8月4日~8月7日 ミュアフィールド(スコットランド) 6649ヤード・パー71>
渋野日向子が1打足りずにメジャータイトルを逃し、悔し涙を流したが、同時に復活ののろしもあげた。AIG全英女子オープン最終日(現地7日)は、通算14アンダーの単独首位でスタートしたアシュレー・ブハイ(南ア)を、同じ最終組の渋野、その前でプレーするチョン・インジ(韓)が5打差で追った。渋野は14番のダブルボギーで優勝争いから脱落しかけたが、しぶとく食い下がり、最後まで優勝に望みをつなぐも18番でバーディーが取れず、通算9アンダー。10アンダーでのプレーオフに突入した2人にわずか1打及ばず、3位に終わった。
イーグルもダボもありながら最後まで食い下がった渋野日向子
この日は5番のイーグルの他に、2バーディー、3ボギー。通算10アンダーで前半を終え、ジワジワとブハイを追っていた渋野だが、14番で”貯金”を吐きだした。
左に出たティーショットをポットバンカーに入れてしまい、第2打は出すだけ。3打目でグリーンをとらえたが、10メートルのパーパットが残った。1.5メートルと寄せきれず、ボギーパットもカップにけられてダブルボギー。残り4ホールでブハイとの差は5打に広がった。
それでも粘り強く戦い続けた。
16番でブハイがトリプルボギーを叩き、10アンダーに後退するのを待っていたかのように、17番パー5で、渋野は2パットできっちりバーディー奪取。1打差に迫る。だが、反撃はここまでだった。
チョン・インジが1組前で10アンダーフィニッシュをしており、ブハイとのプレーオフになったが、1打足りずに加わることができなかった。
悔し涙と笑顔が交錯する3位は今後の活躍に期待が高まる
「やり切ったかなとは思うんですけど、悔しいです」
必死に笑顔で話そうとするが、こみ上げる涙に声を詰まらせる。だが、スイング改造から不調に陥り、予選落ちが続いたところから、メジャーで優勝争いができるまでになったからこそ味わえる悔しさだと、本人もよくわかっている。
キャディのアドバイスでアドレスを修正し、先週までとは別人のようにパットのタッチがよくなったことで、初日首位の好発進。それに伴ってショットも絶好調になり、優勝争いができるところまで戻ってきた。
「最近の私のゴルフの調子とか、自分の考えてることとかと全く違うゴルフができた4日間でした」という言葉は、自分に対する新鮮な驚きと発見があったことを示している。
自信を失い、どんどん委縮していったことで、追い詰められていたが、そこから立ち直った。
「自分の心の持ちようによって、ゴルフが変わると思った3日間でした」と、のびのびとクラブを振り、思い切ってパットを打つ本来の姿を取り戻しつつある。その結果としての優勝争いだった。
惜しくも優勝には手が届かなかったが、自信を取り戻した渋野。世界に羽ばたくきっかけとなった全英女子オープンでの優勝争いを終えて、「いいコースで初心に戻れたのはよかった」と最後は笑顔で締めくくった。
プレーオフ4ホール目で勝利を手にしたブハイ
優勝争いは、ブハイ、渋野、インジの3人に絞られていく。最後は渋野が1打足りずに脱落。ブハイとインジが通算10アンダーでプレーオフとなった。
米ツアー4勝のうち3勝がメジャーと、大舞台にめっぽう強いインジは、今年の全米女子プロでも勝っている。一方のブハイは、欧州3勝だが米国では未勝利。メジャーでは、2019年の全英女子オープン最終日に渋野を2打差で追いかけたが追いつけず、5位に終わっている。
そんな27歳(インジ)と33歳(ブハイ)のプレーオフは、18番を繰り返しプレーするサドンデス。ともに技と気力を振り絞り、1ホール目はパー、2ホール目はボギー、3ホール目もパーと、日没と競うように戦いは続いた。
そして迎えた4ホール目。インジのティーショットはバンカーにつかまって3オン。対するブハイは、フェアウェーからの第2打が右のバンカーに入ったが、これを50センチにピタリと寄せた。インジのパーパットが入らず、ブハイがパーをセーブして、メジャー初優勝が決まった。
勝利が決まって真っ先に駆け寄ったのは、ツアーキャディーをしている夫のデビッドさん。妻のバッグは担がず、今回はイ・ジョンウン6(韓)のキャディをしていたが、ホールアウト後は祈るように優勝争いを見守っていた。夫の温かいハグと、家族や仲間たちの祝福に、喜びを爆発させたブハイ。これまでの苦労が報われた瞬間だった。