あだ名は「ツー・グローブ」“危険”なゴルフ人生を歩んだトミー・ゲイニー【舩越園子 ゴルフの泉】

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苦労人だったトミー・ゲイニー 写真:Getty Images

日本の漢字は外国人にも人気ですが、ときどきおかしな日本語をプリントしたTシャツを着ていたりするのを目にしますよね。今回は、そんな人がPGAのツアープレーヤーにもいた!というお話です。

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当時では珍しい両手グローブ派だったトミー・ゲイニー

 2008年の春。トミー・ゲイニーというアメリカ人選手がプレー以外のことで、ちょっぴり話題になっていました。当時、アメリカツアーで両手にグローブをはめてプレーしていたゲイニーは珍しい存在だったのです。

 今でこそ、両手にグローブをはめることは、アマチュアゴルフの世界でも珍しくなくなっています。しかし当時は、ゴルフのグローブは右利きの人なら左手に、左利きなら右手にはめるものとされており、両手にグローブをはめる選手はほとんどいなかったのです。だからゲイニーには、「ツー・グローブ」というニックネームまで付けられていました。

 「なぜ両手にグローブをはめるのですか?」と尋ねると、ゲイニーはこう答えました。「僕は元々、野球少年だったから、ゴルフクラブを握るときも、野球のバットを握るときと同じ感覚なんだ」。

 なるほど!そう言われてみると、彼のスイングにも野球のスイングの名残りが見て取れました。

2008年当時は珍しかった両手グローブ。ニックネームは「Two Gloves」 写真:Getty Images

「安全」と「危険」の漢字間違い!

 でも、私がもっと気になったのは、彼のゴルフバッグに付けられていた「危険」という漢字二文字でした。

 「これは僕が契約しているスポンサーの企業理念を文字化したものなんだ」と、ゲイニーは自慢げでした。しかし、「この漢字二文字の意味は?」と尋ねると、彼は英語で「セイフ」、つまり「安全」だと即答したのです。

 どうやら、誰かが何かを勘違いして、「安全」と記すべきところを「危険」という漢字にしてしまった様子でした。

 ゲイニーは大学卒業後、地元の工場に就職したらリストラされて失業し、「残された選択肢はゴルフだけだった」ということで、1997年にプロ転向。それから10年以上もかかって、アメリカツアーにたどり着いた苦労人です。

 彼の人生は、「安全」や「安泰」とはほど遠い波乱万丈です。そう考えると「安全」ではなく「危険」と記されていたことは、まんざらでもないなと思えてきて、この不思議な偶然が面白く感じられました。

文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)

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