セルフプレーが主流の時代になり、キャディつきプレーの経験が一度もないゴルファーが増えています。キャディつきプレーですと、ショットが曲がって隣のホールの方向にボールが飛んだとき、キャディさんが「ファー!」と発声して危険を知らせてくれますが、セルフプレーだと「ファー!」の発声の意味を理解していない人も多いようです。
プレーした球が誰かに当たる危険があるときはプレーヤーが注意を喚起する
キャディつきプレーのゴルフ場に行くと、今でもコースのあちこちで「ファー!」の発声を聞きますが、セルフプレーのゴルフ場では「ファー!」の発声を聞く機会が明らかに減っている気がします。
ときには「ファー!」の発声がないまま隣のホールからボールが飛んできて近くに落下し、ヒヤッとすることがあります。
しかも近ごろは隣のホールにボールを打ち込んでも置き去りにするゴルファーが増えているので、誰が打ち込んだのかも分かりません。
「ファー!」の発声はゴルフ規則に記されている「すべてのプレーヤーに期待される行動」の1つです。ゴルフ規則1.2「プレーヤーの行動基準」には、すべてのプレーヤーが次の3つの行動を取ることが期待されています。
「誠実に行動すること」……規則に従う。すべての罰を適用する。
「他の人に配慮を示すこと」……速やかなペースでプレーする。他の人の安全に気を配る。
「コースをしっかりと保護すること」……ディポットを元に戻す。バンカーをならす。
「ファー!」の発声は他の人の安全に気を配る行動です。「プレーヤーのプレーした球が誰かに当たる危険があるかもしれない場合、プレーヤーはすぐに注意を喚起(『フォアー』のような伝統的な警告など)するべきである」と記されています。
文中では「ファー!」と表記しているのにゴルフ規則の引用は「フォアー」にしたのは、英語の語源を知ってほしいからです。「フォアー」は英語の「FOR」です。声を出した方向の前方にボールが飛んでいったことを知らせる「フォアー」なのです。
さらに正確に注意を喚起するには、「FOR RIGHT(右に飛んだ)」「FOR LEFT(左に飛んだ)」と方向を付け加えます。
ゴルフ場でプレーするすべてのゴルファーは、自分が打ったボールが誰かに当たる危険があるかもしれない場合、すぐに注意を喚起するのが義務であることを認識していただきたいです。
プレーヤーが球の行方を見失ったときは同伴者が注意を喚起する
ただ、現実問題として初心者はボールを打った瞬間に行方を見失うことがあります。ボールがどこに飛んだか分からなければ、どの方向に注意を喚起すればいいかも分かりません。
その場合は同伴競技者がボールの行方を見守り、プレーヤーの代わりに「ファー!」の発声をしてください。
ゴルフ場で大きな声を出すのは恥ずかしいと感じる人がいるかもしれませんが、危険を知らせる行動を取らないことのほうが恥ずかしい振る舞いです。
ゴルフ場は大人数で広大なフィールドを共有するスポーツですから、他の人の安全に気を配るのはとても大事な行動なのです。
文/保井友秀