今季の国内男子ツアーで、5週連続最終日最終組という活躍を見せている中島啓太プロですが、今回は、彼がまだアマチュアだった頃のスピーチ力にまつわるお話をしたいと思います。
海外であっても自分の言葉で伝える中島啓太の姿勢
2021年9月の国内男子ツアー『パナソニックオープン』をアマチュアにして制した中島啓太選手が、日本のナショナルチームのヘッドコーチであるオーストラリア人のガレス・ジョーンズとやり取りしながら指導を仰いでいると優勝会見で語っていました。
そこで、その方法を尋ねたところ、「自分で直接、英語でやり取りしています。そのぐらいの英語はできるので」と明かしてくれました。
そして2021年10月、中島選手はドバイで開催された『アジア・パシフィック・アマチュア選手権』を制し、その翌年の『マスターズ』の出場権を手に入れました。
中島選手は表彰式で、アメリカ人の女性レポーターからの英語の質問にすべて自力で、英語で答えていました。涙もろい彼の目は、まだうれし涙で濡れていて、頭の中も胸の中もいっぱいだったはずですが、それでも自分の想いを自分の英語で表現した彼の姿は立派でした。
海外でファンやメディアの心をつかむにはスピーチ力が必要
また、優勝スピーチでは、中島選手の後方に立ち、彼の一言一言に耳を傾けていた大会関係者の大人たちは、みな笑顔で頷きながら彼の優勝スピーチに聞き入っていました。彼らは、きっとケイタ・ナカジマの名と彼のあの日の雄姿を忘れることはないでしょう。
そんなふうに人々の脳裏に焼きつく勝者の姿を披露できることは、これからの世界のゴルフ界で活躍するプレーヤーに求められる「グローバルなスター」の要件だと、あらためて感じさせられました。
アメリカではジュニアゴルフやカレッジゴルフの育成プログラムにスピーチ・トレーニングを取り入れているところがたくさんあります。
日本でも、まず日本語で、可能であれば英語でも、しっかりとした優勝スピーチができるゴルファーを育て、グローバルなスターを日本からも輩出したいではありませんか。
スピーチの力はとても大切です。『アジア・パシフィック・アマチュア選手権』での中島選手の優勝スピーチを眺めながら、私はそんなことを考えていました。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)