◆国内男子プロツアー<ASO飯塚チャレンジドゴルフトーナメント2023 6月8日~6月11日 麻生飯塚ゴルフ倶楽部(福岡県) / 6809ヤード・パー72>
サンデーバックナインは3試合連続となるタクミとケイタの息詰まるデッドヒート。最終ホールで金谷拓実に中島啓太が追いつき、通算29アンダーでプレーオフへ。2ホール目で中島がバーディーを奪い、プロ転向後初優勝、アマ時代を含めてツアー通算2勝目をもぎ取った。また、金谷の先輩である岡村了が単独3位に入った。
中島啓太は家族や周囲のスタッフに感謝の弁
最終日、最終組での対決は今週で3大会連続。単独首位の金谷から3打遅れてスタートした中島が、9番のバーディでついに首位の金谷に並びかける。さらに12番のバーディーで待望の単独首位に立ったものの、金谷も負けていない。今度は14番で金谷がバーディーを奪い再びタイに。
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15番で再び中島が単独首位に立つが、2オン可能な17番パー5ではフェアウエーからの第2打を左に曲げ林に。切り株の後ろにボールが止まる不運もあり、3打目もグリーンをオーバーし痛恨のボギーを叩く。一方の金谷は、このホールで2オン2パットのバーディー。金谷が単独首位の座を奪い返した。
しかし、中島もあきらめなかった。最終18番で4メートルのスライスラインを決め、値千金のバーデイーを奪い右手でガッツポーズ。プレーオフへと持ち込んだ。
1ホール目。中島はラフに止まった第2打が修理地からの救済によりフェアウエーにドロップできる幸運に恵まれた。だが、これを生かせず互いにパー。勝負は2ホールへと持ち越された。
このホールで金谷がラフからの第2打を大きくグリーンオーバー。一方の中島は30センチにつけ、バーディーを確定させるスーパーショットを演じて見せた。
金谷は3打目でチップインしなければならない絶体絶命のピンチ。このアプロ―チがピンをオーバーした時点で、事実上の決着となった。
勝利が決まる前から、あふれそうな熱い涙をこらえていた中島。その胸にはアマチュア時代の2021年『パナソニックオープン』でツアー初優勝を飾りながら、プロ転向後、悩み苦しんだ日々の記憶が去来していた。
「ウイニングパットが30センチぐらいで気を使う感じではなくて、打つ前から泣きそうになっていて感情が溢れていました」と語った後に、こう付け加えた。
「なかなかプロ転向してから調子が良くなくて、同年代の選手が勝っているのを目の前で見ていたんですけど、そこで焦る自分がいなかったので、自分のゴルフを続けていれば勝てると信じていました。理解してくれた家族やトレーナーさん、コーチ、スタッフみんな理解してくれて協力してくれたので、嬉しかったです」と、周囲への感謝の気持ちを口にした。
金谷拓実は勝者・中島を讃える
プレーオフ2ホール目、自滅の格好で中島に勝利を献上した格好の金谷は、「ティーショットが思ったよりも飛んでしまいました。沈んだライで、縦の距離感も合わせられなかったし、しょうがない」と肩を落とした。だが、3試合連続して最終日最終組を戦った末、後輩中島の勝利を目の当たりにしただけに感慨もひとしお。
「4日間で29アンダー出して、自分のプレーはやり切った。中島選手は、もう、あっぱれですね。プレーオフの最後もナイスショットだったし、本当に素晴らしかったです」と中島の健闘を讃えた。
だが試合後、「(中島を)最後に抱きしめて、どんな言葉をかけた?」の問いには、「それは2人だけの秘密ですよ」とはぐらかした。一方、中島は、「金谷選手にはなんと声をかけられた?」と聞かれると、「すごく良かったと言ってもらえて、嬉しかったです」と明かしている。
金谷の次戦は、ツアー選手権の優勝により出場資格を得た、欧州・DPワールドツアーの『BMWインターナショナル』。2月のアジアンツアー『インターナショナルシリーズ オマーン』に続く海外2勝目に期待がかかる。
岡村了が地の利を生かし3位フィニッシュ
プロ6年目、26歳の岡村了が、昨年の今大会に続き自身2度目の決勝進出を果たし、7打差の22アンダーながら単独3位の好フィニッシュだ。
岡村は会場まで車で20分ほどの飯塚市の出身。JGTOのウエブサイトによれば、「実家からだと気合いが入らないので」ホテルから通勤していたという。
2018年にプロ転向後、昨年の今大会ではマンデー予選を突破して本選出場権をゲットし、その勢いをかって初の予選通過を果たした。
今年も昨年初日と同スコアの「66」を叩き出す好スタート。「小学校の同級生とか、近所のおじいちゃんおばあちゃんも来てくれました。バーディーを取った時の声援がすごい大きくて、それが力になってまたバーディー取れました」と地元の声援を力にして波に乗った。
最後まで崩れなかった原因は、東北福祉大の先輩・岩田寛の練習をドライビングレンジでたまたま見て、自分のスイングに取り入れたこと。
大学の2つ後輩でもある金谷と、中島(日体大出身)が演じていた異次元のV争いには加われなかったが、実はキャディをつとめた妻の友梨さんも、東北福祉大の同期生。学生時から7年の交際で11月に入籍し、年明けには挙式も控えているという。今大会をきっかけに大きく飛躍し、トッププロの仲間入りを果たしたいところだ。