◆国内男子プロツアー<BMW 日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ 2023 6月1日~6月4日 宍戸ヒルズカントリークラブ 西コース(茨城県) / 7430ヤード・パー71>
初日から首位を走った金谷拓実(25歳)が4日間首位を守る完全優勝を達成。2シーズンぶりとなる今回の優勝で、アマチュア時代の勝利も含めツアー通算4勝目を飾った。悪天候によるサスペンデッドが重なり、厳しい条件でのプレーとなった今大会の最終日のプレーから3選手をピックアップする。
金谷拓実が闘病中の母に朗報を届ける
完全優勝と見事な勝ちっぷりを見せた金谷だが、優勝への執着は、むしろ前週の方が強かった。
『ミズノオープン』は、出身地・広島からほど近い岡山での開催。最終日には、乳がんで闘病中の母・美也子さんが応援に駆けつけてくれていたからだ。
目の前で、優勝をプレゼント。16番、17番の連続バーディで、その思いが現実になりかけた。しかし最終18番のパー5で、その思いが空回り。ラストチャンスに賭けたスプーンのティショットは、入れてはいけない左の池をめがけて飛んだ。
池ポチャこそまぬかれたがスタンスを取れない状態で、2打目は出すだけとなってしまう。パーを拾うのが精いっぱいとなり、1打足りず悔しい3位タイ。プレーオフに加われなかった。
だが、その雪辱を晴らすチャンスが、早くも翌週の今大会で訪れた。見事に気持ちを切り替え、難所・宍戸ヒルズを見事に克服。完ぺきな形で勝ち切った。
「(先週は)優勝して励みにしてくれたらな、と思っていましたけど、目の前で優勝を届けられなくて。今週こうして優勝できて、テレビの前で見てくれて励みになってくれればいいな、と思います」
国内メジャー大会は初制覇となり、5年シードも獲得した息子の姿は、病と闘う母にとって頼もしく映ったはずだ。
中島啓太はまたも悔しい2位
プロ転向後の初優勝は、またも手の内からスルリと逃げた。
ミズノオープンでは22歳と同年齢の平田憲聖に悔しいプレーオフ負けを喫した中島啓太だが、今大会も3歳年上の金谷と最終日最終組で優勝争い。14番のパー4でチップインを奪い、一時は金谷に並びかけた。
だが16番で痛恨の3パット。逃げる金谷を捕まえることはできなかった。「悔しいですね」とつぶやいたが、すでに気持ちは前を向いていた。
「先週に引き続き最終日最終組で、僕も金谷さんもすごく我慢強くプレーできましたし、ソン・ヨンハンさんも終盤まですごく粘り強いゴルフをされていて、3人でこの最終組を盛り上げられたかなと思います」
さらにこう続けた。
「こういうゴルフを続けていって、こういう優勝争いを何回も重ねていけば、いつか必ず勝てると思います。今週は天気も悪くてサスペンデッドだったりして、その中でも気持ちを切らさずにプレー出来た3人が最終組だったと思うので、気持ちの強さというのは少し自分でも誇りに思いたいなと思います。今週一番良いプレーをしたのが金谷さんということだと思いますし、僕が一番良いプレーをして優勝する日を想像しながらトレーニングしたいなと思います」
世代交代が着実に進行中の男子ツアー。「優勝」と書かれたドアをノックし続ける中島の前で、扉が開く日はそう遠くない。
岩田寛が全英切符を獲得
今季好調の岩田寛が2打差の2位タイに食い込み、『全英オープン』の出場権をゲットした。
開幕戦「東建ホームメイトカップ」から始まった「全英オープン」の日本予選が、このツアー選手権で終了。有資格者の金谷を除いた最上位者となり、2008年と2014、15年に続く8年ぶり4度目の切符を手にした。
日本ツアーからは岩田のほか、蟬川泰果、比嘉一貴、星野陸也、平田憲聖、中島啓太、安森一貴が出場権を獲得している。大会は7月20日~23日に英国・ロイヤルリバプールで行われる。
サンデーバックナインでの、ラストスパートがすごかった。13番でこの日の初のバーディをもぎ取ると、15番から連続バーディ。この時点で首位と1差まで詰め寄り、難所と言われる宍戸ヒルズを68で回り切った。
今季は、日本と欧州の共同開催となった『ISPS HANDA 欧州・日本どっちが勝つかトーナメント!』でも日本選手最高の4位タイ。欧州勢に存在感をしっかりアピールしているだけに、全英オープンでの活躍にも期待が膨らんでくる。
その後も『中日クラウンズ』で優勝、そして今大会で2位タイと高いレベルで好調を維持している岩田。「メジャーは楽しみ?」の問いには、「ありますね」とポツリ。
寡黙な男・岩田が、胸の内でひそかに燃やす闘志が、全英での猛チャージにつながることを期待したい。