現在52歳のフィル・ミケルソンですが、その技術力の高さはツアーでも十分戦えるレベルです。ただ、そんな彼も50歳を迎えたときには、胸中に思うところがあったようです。要するにツアーからの撤退です。ただ、そんなミケルソンにまだ戦える自信を与えた人物がいます。今回は、そんなミケルソンのお話です。
50歳で全米プロ制覇の偉業
2021年、フィル・ミケルソンがシニア年齢の50歳にして全米プロを制覇し、メジャー6勝目と米ツアー通算45勝目を挙げたとき、アメリカ中、いや世界中が心から彼の勝利を讃えたのは、ミケルソンが正直に、懸命に、歩み続けてきた「徹底した生き方」に、誰もが共感し、そして勇気づけられたからだと私は思います。
そう、ミケルソンは何をやるにも徹底しています。徹底的に練習し、徹底的に勝利を目指し、ファンサービスも、メディアサービスも、何もかもが徹底しています。
そして、スター選手として子どもたちや世界中のゴルファーから憧れの的となっている自分自身のイメージを保つための努力も徹底しています。
そんなミケルソンは、当時年齢的な限界も感じ始め、徹底した戦い方ができないのなら、もう若者たちと伍して戦うアメリカツアーやメジャー大会からは身を引き、シニアの世界だけでプレーしようかとも考えている様子でした。
シャウフェレに3連勝!
しかし、2019年頃の出来事ですが、ミケルソンはザンダー・シャウフェレという若い選手とお遊びの「勝負」をしたら、驚いたことに3連勝してしまったのです。
驚くやら、喜ぶやらで、すっかり興奮してしまったミケルソンは、大急ぎで自宅へ戻り、愛妻エイミーにこう告げたそうです。
「エイミー、僕はまだメジャーに勝てる。まだ戦えるよ」
それ以来、ミケルソンは、再びメジャー大会で勝つことを目指し、徹底した鍛錬を積み始めました。「たくさんの犠牲も払ってきた」と彼は明かしてくれました。
最大の犠牲は、「好きなものを食べることを諦めたこと」。大好きなハンバーガーも、一切、口にせずに頑張ってきたそうですが、「払う価値のある犠牲だった」と、しみじみ振り返っていました。
ミケルソンの史上最年長メジャー優勝を可能ならしめたものは、どんなことにも徹底して臨む「彼の徹底ぶり」だったのではないかと私は思っています。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)