◆国内女子プロツアー<富士フイルム・スタジオアリス女子オープン 4月7日~9日 花屋敷ゴルフ倶楽部 よかわコース(兵庫県) / 6435ヤード・パー72>
前半はどっしり構え、勝負どころでスーパーショットを放って決着をつける。昨年の年間女王らしいゴルフで、山下美夢有がシーズン最初の優勝を飾った。第1ラウンドが悪天候で中止となり、36ホールに短縮されたJLPGAツアーシーズン第6戦『富士フィルム・スタジオアリス女子オープン』の最終ラウンドは、5アンダー首位の山下と、1打差2位から追走する岩井千怜の大激戦。一時は岩井に2打のビハインドを許した山下だったが、動じることなく受けて立ち、最後は見事に振り切った。
逆転されても「しっかり落ち着いてプレーできました」
女王の貫録を十分に見せた優勝だった。同じ最終組の岩井が2番バーディーと先手を取って早々に首位に並び、4番、5番、8番とバーディーを重ねて通算8アンダー。4番バーディーだけの山下に2打差をつけたが、山下は顔色一つ変えない。
「しっかり落ち着いてプレーできましたし、追いかける立場になったので、(再び逆転する)そのためにはどうしないといけないかという風に考えてやっていたので、こういう優勝争い、こういう戦いができたのは本当にうれしく思います」という言葉からも、戦況に振り回されることなく自分のゴルフに専念していたことがよくわかる。
勝負がかかった後半に、ジワジワと岩井に迫り、通算9アンダーで首位を並走したまま最終ホールを迎えた。勝負がかかったパー4の第2打は、残り170ヤード。5Uを持った山下は1.5メートルのチャンスにピタリとつけた。
対する岩井は、グリーンをショートして右手前バンカー。高い球で攻めたことが災いして目玉になり、明暗が分かれた。岩井がボギーを叩いた後、山下はバーディーパットを外したが、それでも通算9アンダーで優勝が決まった。
ジュニア時代なじみのコースで強まるトッププロの自覚
優勝が決まった瞬間、いつも以上に柔らかい笑顔を見せた。
大阪府寝屋川市出身の山下にとって、ここはジュニア時代から慣れ親しんだゴルフ場で、地元感が強いこともある。『スタジオアリスジュニアカップ』では、2011、2013年の2回、優勝を経験している。
「不思議な感じですね。ジュニアの時は、そんなにプロになろうとか、優勝した時もあまり感じていなかったので。でも、こうしてプロになって優勝したことによって、あらためて実感があるというか」と、しみじみ口にする。
今年は逆にプロの立場で同大会優勝のジュニアたちと交流し、プロとしての自覚が増したようだ。「ジュニアの子たちもこれからプロを目指してやっていると思うので、『山下プロを目指してます』と言ってくれるジュニアの子たちが増えるように、私自身ももっともっと頑張りたいなという強い気持ちになりました」と、逆にエネルギーをもらった。
女王の重圧も感じていない!?
頂点に立った者が背負う重圧も、今のところ感じていない。
女王の肩書を背負うシーズンの戦いについて聞かれても、「毎試合優勝を目指してやる、というのを心がけているので、チャンスが来たらこういういい流れで行けると思う。そんなに女王になったので早く勝たないと、という感じじゃないかな」と、あっさり一蹴。
前週のヤマハレディースオープン葛城でも、優勝争いをしながらプレーオフに1打足りずに3位に終わっているが、そのリベンジという気持ちも特になかったと言う。
目の前の試合に集中して勝ちに行く。山下の強さは、ここにあるのかもしれない。