日本の男子ゴルフが低迷している原因は「スターがいないから」「華がないから」と言われています。しかし、日本の男子ツアーの試合会場でよくよく眺めてみたら、魅力的な選手が何人もいることがわかり、私は逆にほっとしました。今回は、そんな日本の男子ツアーが再び脚光を浴びるために必要なものに関するお話です。
率先してツアーを盛り上げようとする中西直人の男気
日本の男子ツアーが「華がない」と思われているのは、選手の魅力が人々に伝わっていないからで、それを伝えるのはメディアの仕事ではありますが、選手自身が自己アピールできれば、そのほうが手っ取り早いし、正確に伝えることもできるはずです。
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そして、日本で自己アピールを最も積極的に行っているのは、中西直人という選手です。2010年にプロ転向した中西選手は、34歳ながらシード選手としては「なりたて」に近く、優勝経験もまだありません。
しかし、彼の自己アピール術は、すでに日本のゴルフ界ではナンバー1。特徴的なツバの広いハットやスタイリッシュなウエアは、すべて自分自身が経営する会社でデザイン、製造しているそうです。
「僕は、遠くから見ても僕だとわかる着こなしを心がけています。僕はこれをオンリーワン・プロジェクトと呼んでいます」
試合の日もスタート直前までスマホで動画を自撮りして、ティオフまでの数十秒ぐらいの間にSNSへ素早くアップします。
「大変か?大変です(笑)。でも、これが自分が選んだ道です。ファンのみなさんは無償の愛で応援してくれる。みなさんはロープの内側から外側を見ることができないので、僕は応援を受けている側の景色をみなさんと共有したい。そうできることが、とても幸せです」
PGAツアーが導入している“PIP”を日本でも!
そんな中西選手の姿勢は、単なる自己アピールにとどまらず、ゴルフファン拡大やゴルフというゲームそのもののアピール、向上につながるはずです。
アメリカツアーでは、選手が人々に与えたインパクトを数値化するPIPというプロジェクトを実施しています。PIPとは2021年の春から導入している「プレーヤーズ・インパクト・プログラム(PIP)」というシステムで、選手が社会や人々にどれほどのインパクトを与えたか、人々からどれほど注目され、話題にされたか、グーグルやSNSに登場した回数や頻度といったデジタル・フットプリントを、「インパクト・スコア」という数値で示し、これをランキング化するというものです。
シーズン終了後は、このPIPのランキングでトップ10に入った選手たちには総額40ミリオン(約44億円)のボーナスが支払われるのですから、当然、選手たちは自己アピールに一生懸命、取り組んでいるというわけです。
もしもPIPを日本でも創設したら、選手たちへの刺激になり、もっと華やかになるのではないか。少なくとも何かが変わるのではないか。私はそんなことを考えています。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)