集中力失い自滅した上田桃子 自分のゴルフ貫き逆転Vの青木瀬令奈

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(左から)3位タイに終わった上田桃子と逆転Vの青木瀬令奈 写真:Getty Images

◆国内女子プロツアー<Tポイント×ENEOSゴルフトーナメント 3月17日~3月19日 鹿児島高牧カントリークラブ(鹿児島県)   6419ヤード・パー72>

ゴルフの怖さ、奥深さを感じさせる大激戦を、青木瀬令奈が制した。シーズン第3戦『Tポイント×ENEOSゴルフトーナメント』最終日は、4打差単独首位で臨んだ上田桃子が5連続バーディーと怒涛のスタートダッシュ。一時は2位に8打差をつけ、独走かに見えたが、8番のボギーで大きく流れが変わった。集中力を失って後半自滅。マイペースでスコアを伸ばし、13番で首位を奪った青木が、通算17アンダーでツアー4勝目を飾った。

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「自分でもわからない」ベテラン上田桃子がはまった落とし穴

 まさかの逆転劇だった。

 ツアー通算16勝、2007年には賞金女王タイトルも取り、米ツアーでもプレーした経験を持つ上田が、8打差をつけながらバックナインの自滅で勝利を逃したのだ。

 「8番はしっかり打っていって3パットもあるかな、と思っていたので、まぁ11番じゃないですかね」と、振り返った苦しい18ホール。

 11番でバンカーからダブルボギーを叩き、イヤなムードが漂う。パー5の13番でも、バンカーからダブルボギー。このホールで6つ目のバーディーを奪った青木に、首位の座を譲り渡した。

 一気に2打ビハインドとなった14番もボギー。17番もボギーで、結局、通算11アンダー3位に終わった。

 「なかなか集中力を戻すのが難しかったと思います。調子は悪くなかったけど、ラフに行ってしまったり、もっとああした方がいいかな、こうした方がいいかな?となっていました。自分でもわからないですねフィーリングというより集中力が欠けていたと思います」と呆然と話す上田。

 百戦錬磨のベテランでも、こんな負け方をする。ゴルフの怖いところだ。

5連続バーディーのスタートダッシュから後半自滅した上田桃子 写真:Getty Images

8打差から… 続く逆転負けからのリベンジへ

 開幕戦ダイキンオーキッドで2位タイ、2戦目の明治安田生命レディスヨコハマタイヤゴルフトーナメントでは18位タイと、好調に滑り出した2023年。

 鹿児島高牧CCは、昨年の同大会でも最終日、最終組で優勝争いしたコース。相性は悪くない。「グリーンの面、面に打って行かないといけない。そういうコースで2年連続で優勝争いできているので、後は最終日の課題を自力で克服するだけ」と、前日口にして臨んだ最終日だった。

 だが、昨年のTOTOジャパンクラシック、伊藤園レディスのいずれも首位で最終日を迎えながら競り負けていることも頭を過ぎった。

 「また競り負けないようにするのか、やっと優勝できるチャンスが来た、ととらえるのか。とらえ方次第だな、と思っています。今日1日かけてどういうマインドでプレーするのがベストなのか考えたい」とも話していた。

 5連続バーディーは、自らやるべきことをやった結果。だが、勝負のかかったバックナインで、ツアー通算17勝目はスルリと逃げた。

 屈辱の逆転負け。だが、36歳になっても衰えることのない上田のゴルフへの情熱は、必ずこのリベンジをするに違いない。どんなに苦しくても…。

「あきらめずにやった結果」青木が自分のゴルフを貫きつかんだ逆転V

最大8打差から逆転勝ちした青木瀬令奈 写真:Getty Images

 徹底的に自分のゴルフを貫いた青木の強さが際立った。

 4打差で追う上田の5連続バーディーを目の当たりにしても、ポジティブな気持ちを持ち続けた。「5連続のOKバーディーで圧巻でした。すごくいいゴルフで、ああいうゴルフを私もしたいな」と、いい方向に考えてバーディーを重ねた。

 5番、6番、8番、10番、12番。気が付けば差は縮まり、13番で逆転した。勝負の流れが変わることも、しっかり予想していた。

 「最初にいいと、そのままいい1日で終えることもありますが、優勝争いをしていると、苦しい場面が来ないこともないと思っていたので、桃子さんがいい滑り出しをして、でも後半苦しくなってくるかもしれないな、と。私自身も後半伸ばせばチャンスはあるのかな、とあきらめずにやった結果だと思います」と胸を張る。

 3日間、54ホールボギーフリーで通算17アンダー。終わってみれば、2位の笹生優花に4打差をつけての圧勝だった。

 元々、ゴルフ以外にも多趣味で、オシャレにも気を遣うタイプだったが、私生活をよりストイックにして自分を追い込むことを選んだ。

 「何かを犠牲にして何かを得るという方が、私にとってゴルフにプラスになるとわかりました」と言い切る。美容院、ネイルサロンに行くことをやめ、宝塚観劇も我慢し続けていた。だが、優勝でこれも解禁する予定でいる。

 同い年で、現在、ツアーを離れている成田美寿々に対する思いもある。

 「私の頑張りが彼女にとって、また頑張ろう!と思(うきっかけにな)ってくれればいいなと思っています」。結果を出して刺激することが、何より効くとわかっているからこそだ。

 子供の頃の”師匠“に捧げる優勝でもあった。昨年末に亡くなった佐藤剛平プロだ。「見守っていてくれたのかな、と思います」と空を見上げる。

 ストイックに自分のゴルフを追求し、友人への気持ち、師匠への思いを形にした青木。この日の強さは、今季まだまだ勝てることを思わせるものだった。

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