◆国内女子プロツアー<第36回ダイキンオーキッドレディスゴルフトーナメント 3月2日~3月5日 琉球ゴルフ倶楽部(沖縄県) 6560ヤード・パー72>
申ジエの優勝で終わった国内女子ツアー開幕戦、ダイキンオーキッド。目立ったのは、最後まで逆転を狙った上田桃子、最終日にベストスコアで上位に食い込んだ藤田さいきなど、ベテランの活躍が目立った。毎年、違った顔ぶれが活躍し、新陳代謝が激しい傾向が続いたが、今年は、それに待ったをかけるベテランたちの力が、ツアーを面白くすることになるかもしれない。
JLPGAツアーの永久シードまであと3勝
久しぶりに実力あるベテランが、若手の前に立ちふさがるシーズンになるのか。2023年の女子ツアー開幕戦、ダイキンオーキッドはそんな予感が漂う展開だった。
>>開幕戦を制した申ジエが日本ツアー27勝目!逆転V狙った上田桃子は2位タイ
優勝は申ジエ。昨年は両ヒジ手術などで優勝とは縁がなかったが、復調し、記録上はこれが日本ツアー通算27勝目だ。
永久シード獲得の30勝まであと3勝。最も近い位置にいることになるが、実はすでに29勝を挙げている。2008年全英女子オープンで優勝し、世界に飛び出した申は、米ツアーを舞台にプレーして、ロレックスランキングNo.1になったこともある。主戦場を日本に移したのは2014年からだ。
2008年12月に、当時の制度であるTPD単年登録をして日本ツアーのメンバーとなったが、単年登録前の同年ヨコハマタイヤPRGRレディスで優勝。さらに2010年ミズノクラシックにも勝っているが、当時主戦場だった米ツアーの選手としての出場だった。JLPGAツアーの規定により、この2つは通算優勝回数としてカウントされていない。
だが、本人はどこ吹く風。「メンバーになってからカウントしても、目標は(永久シード獲得の)30勝じゃなくて、30勝以上にしたいので、それ(2勝カウントされていないこと)は考えたことはなかったです。逆に(2試合カウントされないことで通算勝利の)数が少なくなるので、もうちょっと頑張りたいという原動力にもなります」と、あくまでも前向きにとらえており、達成は時間の問題だ。
両ヒジ手術から完全復活!目標は年間女王
1年前のこの大会では「プロになって初めて80台打ちました」と言うほど、ヒジの痛みに悩まされていた。翌週、試合会場に行ったが、出場を断念。すぐに手術に踏み切った。ヒジの中の異物を取り除き、リハビリを経て戦線復帰した。7試合を欠場し、復帰後まもなく優勝争いに顔を出したのはさすがの実力だ。
10月の日本女子オープンでは、勝みなみとデッドヒートを演じたが、1打及ばず。日本に腰を据えてから初めて、勝ち星がない長いシーズンを終えた。惜しいところで勝ち切れず、往年の力が衰えたように見えた。だが、今回の優勝で完全復活を高らかにアピールした。
途中、混戦模様となった最終日、バックナインに入ってショットがやや乱れた時にも落ち着いてパーを重ねた。最終ホールで勝負に出た上田桃子がボギーで終わったのに対し、バーディーフィニッシュ。結果を見れば3打差圧勝。今季のうちに通算30勝を成し遂げる可能性も感じさせた。
もう一つ、大きな目標がある。母国の韓国、米国では賞金女王タイトルを手にしているが、意外にも日本では頂点に立っていない。昨年から、賞金に変わってメルセデスランキングで年間女王が決まることになったが、実力のある申には、よりタイトルが近くなったとも言える。「日本に来て、周りと約束したことなので」と、タイトルに向かって結果を出し続けることを誓った。
毎年、出てくる若手の前にどっしりと立ちはだかるベテランの存在こそが、ツアーを面白くする。今年の申は、JLPGAツアーの層の厚さを見せてくれるに違いない。