◆国内女子プロツアー<大王製紙エリエールレディスオープン 11月17日~11月20日 エリエールゴルフクラブ松山(愛媛県) 6575ヤード・パー71>
藤田さいきが11年ぶりの復活優勝を飾った。
フルフィールドでのシーズン最終戦、大王製紙エリエールレディス最終日(20日)は、通算18アンダー首位スタートの鈴木愛と、1打差2位から追いかける藤田がマッチレースを展開。藤田は安定したプレーで4バーディーを奪って鈴木を逆転。通算21アンダーで優勝した。11年ぶりのツアー6勝目は、支え続けてくれる夫と、シーズン半ばで亡くなったキャディーに捧げるものとなった。
11年ぶり復活優勝に号泣
1メートルのウイニングパットが決まった瞬間、両手で顔を覆ってしゃがみこんだ。あふれる涙が止まらない。
2011年富士通レディース以来、11年ぶりの勝利の美酒を、藤田は涙の中でじっくりと味わった。
スコアカード提出に向かう途中も、ファンやツアーの仲間たちからの祝福に対し、1つ1つお辞儀をして応え、時にはハグを交わして喜びに浸る姿は、その間の歳月を感じさせるものだった。
2番バーディーの鈴木に先手を取られ、 2打差にされたが藤田はあわてることなく、5番バーディーでピタリとついて行く。7番ボギーのあと、8番、9番連続バーディーの鈴木に対し、藤田は9番のバーディーで追走した。11番で鈴木がボギーを叩いた時には、通算19アンダーで首位に並んだ。
流れを引き寄せたのは、13番で4メートルの軽いスライスラインを沈めたバーディー。ここで単独首位に立つ。
14番で鈴木がバーディーチャンスを決めきれず、1打リードで迎えた15番では、先に鈴木に6メートルを入れられた直後に、4メートルを入れ返して一歩も譲らない。
16番パー3では、グリーンを左にはずしたが、絶妙なアプローチとパットでパーセーブして見せた。
17番では鈴木がまたしてもバーディーチャンスを決めきれず。1打差のまま最終ホールへ向かう。第2打を左バンカーに入れた鈴木に対し、藤田はしっかりと2オン。ともにパーで藤田の優勝が決まった。
亡きキャディに勝利を捧げ、夫には心から感謝
1985年生まれの36歳。大会2日後には37歳の誕生日を迎える。
まだ20歳だった2006年に初優勝を飾り、24歳でのツアー4勝目が日本女子プロゴルフ選手権。20代前半に5勝を挙げたが、その後に苦しい日々がやって来る。
特に、2018年に賞金ランキング51位で惜しくもシード落ちし、2019年も60位と結果が出ない間は、体のあちこちに故障を抱え、内臓疾患にも見舞われるなど、身体的にも辛い日々が続いた。
だが、ゴルフを楽しむ気持ちになって迎えたコロナ禍のロングシーズン(2020-2021年)には、ツアー再開2戦目のNEC軽井沢で2位タイに入るなど、安定して上位に入って賞金ランキング28位でシード復活。
3シーズンぶりにシード選手として臨んだ今季は、何度も優勝争いに顔を出していた。その集大成が、鈴木との激闘を制した復活優勝。
表彰式では、「言いたいことがたくさんあり過ぎてここでは言えませんが、みなさんのおかげです。みなさんに支えられてここまで来られました。感謝したいです。ありがとうございました」と、心からスピーチ。
さらに、「10月に最終戦までキャディしてくれるはずの人が亡くなったので、彼のためにも優勝したいと思いました」と、続けた。
涙で声を詰まらせたのは、夫への感謝を口にしたときだ。
「支えてくれたダンナさんに感謝したいと思います」。2011年、26歳の誕生日であり”いい夫婦の日“でもある11月22日に入籍した夫は、常にそばで藤田を見守ってくれている。入籍後、初の優勝まで11年かかった分、思いがあふれた。
「とっても長かった11年でした。一言で言い表せないんですけど素直にうれしいです」としみじみと口にした。
やり切ったので悔しいけれど悔いはないと鈴木愛
敗れた鈴木は「やり切ったので悔しいですけど悔いはないです」と、潔く言った。
11番パー5でボギーを叩いたことを、敗因として挙げたが、最後まで全力でプレーした。
18番の第2打は残り135ヤードを8番アイアンか9番アイアンかで迷った末に9番を選んだが、「めっちゃ飛びました」とアドレナリンが出てバンカーにつかまった。このバンカーショットもしっかりと寄せてパーを取ったが、藤田にスキはなく、結果2位に終わった。
「楽しく回れました。久しぶりにちゃんとした優勝争いがずっと最終日までできたので。久しぶりにギャラリーのみなさんの前でいいプレーができたので、本当に楽しかったです。自分もいいプレーをしましたが、さいきさんがもっといいプレーをしたのでしょうがないかなと思います」と、笑顔ものぞかせた。
昨年の資生堂レディスで2年ぶりに優勝し、涙して以来、勝利から遠ざかっているが、今回、藤田とデッドヒートを演じたことで、自信も取り戻した鈴木の、次の優勝が待たれる。