アマチュアゴルファーの最高の栄誉とされるマーク・マコーマックメダルを史上初めて2年連続で獲得するなど、アマチュアでの輝かしい実績をかかげて昨年プロ転向を果たした中島啓太。淡々としたプレーぶりが印象的ですが、今回はそんな彼のプレースタイルに関するお話です。
まるで役作りをする俳優のようにプレースタイルを確立
2021年のパナソニックオープンを制し、史上5人目のアマチュア優勝を飾った日本体育大学3年生の中島啓太は、すでに2021年の日本アマ・タイトルを獲得し、R&Aがアマチュア世界一に贈る栄えある「マーク・マコーマックメダル」を受賞。世界アマチュアランキング1位を誇る彼の全身から、磨き抜かれたエリート感が溢れ出していました。
>>しゃべらない男・松山英樹を作り上げた強さへのこだわりとは
しかし、アマチュアらしからぬ威風堂々とした姿が、実を言えば、見よう見真似から始まり、地道な努力の末に身に付けられたものであることは、意外に感じられるのではないでしょうか。
試合中、中島はほとんど表情を変えず、淡々と戦っていました。競り合っていた33歳の永野竜太郎が72ホール目の18番でグリーン手前のバンカーに入れたときも、ボールが砂に埋まった様子がテレビ画面に大写しになったときも、永野がそこからの脱出に失敗し、サドンデス・プレーオフ突入が決まったときも、中島は一切、顔色を変えませんでした。
そんなクールなプレーぶりは、中島の性格がクールだからではなく、彼が意図的に、そうしようと努力して身に付けたものだそうです。
参考にしたのはキム・キョンテのプレーぶり
「ポーカーフェースは、キム・キョンテさんを見て、高校生ぐらいで意識しました。サングラスも、キョンテさんの真似をして、かけ始めました」
中島が誰かの真似をしたのは、ポーカーフェースやサングラスだけではありません。胸を張って堂々と歩く彼の歩き方は、2つ年上のトップアマ、「岡崎錬さんを見て、真似しました」。
諸先輩を目で見て学び取り、いいところ、真似できることを取り入れて、自分なりに昇華させていく。それは、アーノルド・パーマーやジャック・ニクラス、タイガー・ウッズといったレジェンドたちも、多かれ少なかれ行なってきた成長のための必須項目。
それを日本のアマチュア選手が実践していると知って、私はちょっぴり嬉しくなりました。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)