◆国内女子プロツアー<日本女子オープンゴルフ選手権 9月29日~10月2日 紫カントリークラブ・すみれコース(千葉県) 6839ヤード・パー72>
勝みなみが、逆転でナショナルオープン連覇を飾った。
第55回日本女子オープン最終日は、首位でスタートした申ジエ(韓)を、3打差で追う勝みなみがフロントナインで捕まえる大激戦。バックナインでは吉田優利を加えた三つ巴の戦いとなったが、最終組の1組前でプレーした勝が、大詰めの17番で値千金のバーディーを奪って抜け出した。日本女子オープン連覇は、樋口久子(1968~71年、1976~77年)、畑岡奈紗(2016~17年)に続く史上3人目となる。
気持ちは熱く、頭はクールに!勝の経験が大接戦を制す要因に
「メチャクチャうれしい。信じられない」と、顔をくしゃくしゃにして、連覇に歓喜した。
ディフェンディング・チャンピオンとして、大会2日前のチャンピオンズディナーで、緊張のため頭が真っ白になりながら乾杯の音頭を取って幕を開けた大会を、勝は最高の形で終えた。首位に3打差で迎えた最終日は、熱い気持ちを持ちながらもクールに戦った。
フロントナインで5つスコアを伸ばして、通算4アンダーで申をとらえた。それでも、「このコースでボギーを叩かずにプレーするのは難しい。ボギーは来るものだと思ってやっていました」と、現実をしっかりと見ていた。
10番ではカラーからのアプローチがうまくいかず6メートルを残したが、これをパターで沈めるスーパーパーセーブ。13、14番の連続ボギーにも、落ち着いていられた。
ピン位置が難しく、「パーで上がれば十分」と臨んだ17番の第2打を、2メートルにつけてバーディー奪取。通算4アンダーとして後続の申、吉田に重圧をかけた。このホール、申はボギー、吉田はダブルボギーを叩き、明暗が分かれた。
プレーオフを覚悟していたが最終組は追いつけず、優勝が決まった。昨年の優勝で、「ムリはしないでチャンスを作れるようになった」と、女子オープンならではの戦い方を覚えたのが大きかった。
シーズン2勝目。「あと1勝はしたい」と、これまでしたことがない年間3勝が当面の目標だ。その先には米ツアー挑戦がある。
亡き祖母に捧げた連覇
1月に亡くなった祖母、市来美江子さんに捧げる勝利でもあった。
教師として共働きする両親は忙しく、幼い頃は母方の祖父母である美江子さんと龍作さんに預けられることが多かった。ゴルフへと導いてくれたのも龍作さんだ。
美江子さんのために頑張る気持ちは?と問われて「あります」と即答した。
多忙な転戦が続くため、墓参りはなかなかできないが、自宅の写真には話しかけることもあるほど身近だった美江子さん。祖父の龍作さんは、この日も美江子さんの形見の数珠を手に巻いて、応援してくれた。
優勝が決まると、「ばあちゃんも見てくれたと思うよ、って言われました」。
祖父母が見守る中での大会連覇。「どこかで見ていてくれたらうれしいなと思います」とほほ笑む。孫は、大きく、強く、そして優しく育っている。
幼い日々からの祖父母の応援が、頑張り続ける原動力になっているのはまちがいない。
頭の中では“アンパンマンのマーチ”とアントニオ猪木の“道”
米女子ツアーのQTに挑むことも、優勝スピーチで宣言した。
その後のインタビューでは、その詳細も明かした。「(Webで)いいよね、ポチ、みたいな感じで。9月中旬くらいだったと思います」と、迷うことなく出場を申し込んだという。
「本当に簡単ではないと思うんですけど、チャレンジャーのつもりで行ってこようと思います」と、やる気満々だ。
この日も、頭の中では自ら見つけた“応援歌”が流れていた。1つは“アンパンマンのマーチ”。もう1つは、亡くなったばかりのアントニオ猪木さんが愛誦していた“道”という詩だ。
『何のために生まれて、何をして生きるのか。答えられないなんて、そんなのはいやだ』
『この道を行けばどうなるのか。危ぶむなかれ。危ぶめば道はなし。踏み出せば、その一歩が道となり、その一足が道となる。迷わず行けよ、行けばわかるさ』
ナショナルオープン連覇に向かう勝の背中を押したこの2つの“応援歌”は、米女子ツアー挑戦に向かう気持ちもしっかりと後押ししてくれるに違いない。