◆国内女子プロツアー＜資生堂レディスオープン 6月30日～7月3日 戸塚カントリー倶楽部（神奈川県） 6570ヤード・パー72＞
青木瀬令奈が、逃げ切りでツアー通算3勝目を飾った。資生堂レディスの最終日、2位に1打差の通算11アンダー単独首位でスタートした青木は、3つスコアを伸ばして通算14アンダー。吉田優利、菊池絵理香、黄アルムに2打差をつけ、逃げ切った。
『懺悔ノート』で自分と向きあった日々
目を閉じて、天を仰いだ。18番グリーンで勝利を確信した時だ。30センチのウイニングパットを沈めた直後には、大きく息を吐き、笑顔でバンザイ。キャディを務める大西コーチとの歓喜のハグで、涙をこらえながら笑顔をさらに弾けさせた。
人一倍、ファンを大切にする青木が、久しぶりに大観衆の前で爆発させた喜び。喝采が、それに応えた。
苦しんで手にした勝利だった。
昨年6月、宮里藍サントリーレディスで優勝した後、ひたすら勝利を目指してあがき続けた。
「毎日苦しかったので、まずは人生を変えられたなという3勝目を挙げることができてうれしいです」。開口一番、そんな言葉が口をつく。今季は、18試合に出場し、5試合でトップ10入りを果たしてはいるが、なかなか勝利に手が届かない。ジレンマを抱え、自分自身と向き合う毎日が続いた。
『懺悔ノート』と本人が呼ぶものに、毎日、文字を綴り、自分と向き合った。
「ひたすら勝ちに対する（様々なこと）を。なんで勝てないのか？どうしたら勝てるのか」。
最終日を迎える前夜も、そうして眠りについた。
「ボードを見ないほうがいい」という大西コーチのアドバイス
連続ボギーでのスタートも、ポジティブにとらえた。
1番、2番はいずれもバンカーからボギー。あっという間に10アンダーでスタートした同じ最終組の吉田優利、ユン・チェヨンに1打ビハインドの立場に転落した。
この時の心境をこう語る。「緊張はしてたんですけど、逆に追う立場に1回なれたのがプラスの意味があったかなと思います」。
ツアー2位のパッティングも大きな武器にした。3番で8メートル、4番で3メートルのバーディーパットを沈めて再び首位に返り咲く。だが、本人はそのことを意識せずにプレーに集中した。「ボードを見ないほうがいい」という大西コーチのアドバイスがあったからだ。
圧巻は、通算12アンダーで迎えた10番からの3連続バーディーだ。10番で、グリーン左奥のラフから15ヤードのアプローチが、きれいにラインに乗ってカップインすると勢いに乗った。11番では、ピンまで203ヤードの長いパー3を、3Wで1グリップにつけるイージーバーディー。12番では7メートルを沈めて、通算15アンダーまでスコアを伸ばす。
17番ではバンカーからボギーを叩いたが、後続に2打差の14アンダーで最終ホールを迎えた。
18番は見事なティーショットでフェアウェー左側をとらえ、2.5メートルのバーディーチャンスにつける。初めてボードを見たのはこの時だ。グリーンに向かう時、カメラの台数などから首位に立っていることはなんとなくわかっていたが、「最後の最後まで攻撃の手を緩めず、じゃないですけどバーディを取りたいということだけ毎ホールやれたのがよかったと思います」と、グリーンに行くまでスコアも順位も意識していなかった。
最後のバーディーパットは残念ながら外したが、それでも余裕の2打差優勝。目の前のプレーに集中したことが、勝利へとつながった。
目標は不動裕理「10億円稼げる選手になりたい」
優勝賞金2160万円を加算して、生涯獲得賞金は3億円を突破した。3億1565万3908円は、ツアー82位。「10億円稼げる選手になりたい」という目標までは、あと7億円近く必要だ。
小学生時代、追っかけもしていたというほど目標にしている不動裕理が積み上げたのは13億6894万4382円。469試合で通算50勝を挙げたツアー1位の記録を、永久シード選手として今でもプレーする不動は伸ばし続けている。その背中を、青木は追い続ける。
前週のアースモンダミンカップ初日に、4アンダー9位タイと好発進した時にも、「朝、不動さんと会ってお話できたのがよかった」と話すほど、不動を目標とする気持ちは強い。
20代前半の選手の活躍が目立つツアーで、現在29歳の青木は中堅だが、これだけの目標を持っている以上、先は長い。
「疲れを貯めないように、以前だったらシャワーだけで全然平気だったのが、しっかり湯船につかって水風呂とか交代浴したりとか、いろいろな気を使って維持できてるなという部分はすごくあります」と、自分の体とも向き合いながら、獲得賞金10億円の金字塔を目指して戦い続けている。
