◆国内女子プロツアー<北海道meijiカップ 8月5日~8月7日 札幌国際カントリークラブ 島松コース(北海道) 6557ヤード・パー72>
横峯さくらが8年ぶりのツアー24勝目まであと一歩に迫り、永久シード権獲得の可能性を感じさせた。北海道meijiカップ最終日、横峯は首位に3打差の通算2アンダー9位タイでスタートすると、この日のベストスコア6アンダーで通算8アンダー。優勝したイ・ミニョン(韓)に1打差2位タイで存在感をアピール。現在通算23勝と、永久シード獲得の30勝まであと7勝が夢ではないと感じさせるプレーぶりは、元女王の貫録十分だった。
ママゴルファー横峯さくら 目指すはあと7勝の永久シード!
リーダーズボードを横峯の名前がスルスルと上がっていく。
「今週月曜日にこれだ!と思うことがフィットしてきて」と、ショット、パットともに開眼。フロントナインだけで5つのバーディーを重ねて、あっという間に優勝戦線に浮上した。
「フェードを打ちたいときには左を向いてしっかり振りぬいていくのですが、これまではインパクトの時にタイミングがずれるとそのまま左に飛んで行ってしまう」という悩みを、ふとしたヒントからか解決。パッティングにも応用したことがスコアにつながった。
バックナインに入って勢いが止まり、バーディーは16番の1つだけ。パー5の18番で、もう1つバーディーを取りたいところだったが、ラフからの3打目が10メートルと寄らず、通算8アンダー止まり。クラブハウスリーダーとして後続を待った。
2組後のイ・ミニョンが最後にバーディーを奪って9アンダーとしたことで優勝はなくなったが、2位タイは今季のベストフィニッシュ。これまで18試合に出てトップ10入りは1度だけ。7週連続も含む10試合で予選落ちしてたが、失いかけていた自信を取り戻すには十分だった。
2009年の賞金女王だが、その後、米ツアー挑戦などもあって最後に優勝したのは2014年大王製紙エリエールレディス。以来、8年ぶりの優勝に手が届きかけたことは大きな意味を持っている。
女子の永久シードは、男子より5勝多い通算30勝が必要だ。現在、保持しているのは、樋口久子、岡本綾子、大迫たつ子、涂 阿玉、森口祐子、不動裕理の6人だけ。選手層が厚くなり、長い間プレーをする選手が少なくなった昨今では、これだけ勝ち星を重ねるのはどんどん難しくなっている。
だが、2021年に長男を出産後もツアーに復帰し、36歳になった今もゴルフに対するモチベーションの高い横峯には、その可能性はある。「今日みたいなゴルフができれば優勝のチャンスはあると思います」と言い切った横峯。これからが楽しみだ。
2位タイの櫻井心那、ともにトップ10の岩井ツインズ。目立った若手の活躍
今大会は、若い選手たちの活躍も目立った。
横峯と並ぶ2位タイに滑り込んだ櫻井心那は、2004年生まれの18歳。昨年11月のプロテストに合格し、QT117位の今季は下部ツアーのステップアップを中心にプレーしている。そこで初優勝して、ステップアップツアーの賞金ランキング1位にいる。レギュラーツアー出場は、これが2試合目。主催者推薦で臨み、結果を出した。
最終日、最終組はもちろん初めて。上田桃子、鈴木愛という賞金女王経験者2人とのプレーに、「とにかく邪魔しないようにしようと気を使いました」と、ピリピリしながらスタートした。
パー3の2番で、4UTで打ったティーショットをグリーン左下30ヤードに落としてダブルボギーを叩いた。そのことで逆に緊張感から解放されて、6バーディー。大詰めの17番では、6.5メートルのバーディーと、上田、鈴木よりいいスコアでイ・ミニョンに迫った。
予選通過が目標だったが、気が付けば最終組で優勝争い。自信を深めて、「レギュラー(ツアー)で戦うことで、日本女子オープンと(日本)女子プロ選手権で優勝できるように頑張りたいです」と来季の目標を掲げた。
また、明愛、千怜の“岩井ツインズ”もともにトップ10入りした。
7月5日に揃って20歳になったばかりの2人は、初日に姉の明愛が4位、妹の千怜が17位にいたが、2日目に千怜6位、明愛9位と逆転するなど日替わりのようにいいプレーを見せた。
最終日は、4つスコアを伸ばした明愛が通算6アンダー5位タイ。千怜は1つしか伸ばせず、4アンダー9位タイに終わった。「妹とも優勝争いできたらいいですね」(明愛)、「いつかは姉妹で優勝争いができると思います」(千怜)と、お互いに刺激し合ってのトップ10入り。底力のある2人だけに、双子での優勝争いはそう遠い将来のことではないはずだ。
辛いコロナ禍を乗り越えてイ・ミニョンがツアー6勝目
3年ぶりのツアー6勝目。「コーチと一緒に試合をするタイプなので、コロナで日本に(コーチが)来れなくて、1人でゴルフをすることは本当に大変でした」と、勝てなかった間の辛さを、イ・ミニョンが打ち明けた。
コロナ禍で出入国に制限がかかり、外国人選手はそれぞれストレスを抱えていたが、それが結果にもろに出た。2019年には2勝して賞金ランキング5位に入っていたのに、2020-2021年は、試合数の多いロングシーズンにもかかわらず優勝できずにランキング25位。
「毎週毎週辛かったです。ゴルフをやめようかと思いました。ほかの日本選手たちが本当にうらやましかったです」と、異国で戦う苦しさを実感させられた。
入国制限の緩和で1週間ほど前にコーチが来日。精神的にも技術的にも落ち着いた。それをすぐに優勝につなげたのは、実力があればこそ。リーダーボードを見ないようにしてプレーに集中し、結果を出した。
来日前の2015年に腎臓がんを患い、手術を経て復活。「自分が優勝することで同じ病気の人たちに少しでも希望を持ってもらえれば」と、以前から口にしている。
また、「たくさん若い選手から学ばないといけないと思っています」と、勝利から遠ざかっている間に台頭してきた若手には脅威を感じているが、貪欲に吸収する気持ちも強い。
シーズン後半、台風の目になることを予感させる復活優勝だった。