試合中にプロゴルファーが頼れるのはキャディだけです。今回は、プロゴルファーの相棒であるキャディに求められる「3つのアップ」についてのお話です。
キャディの心得「3つのアップ」
ゴルファーをかたわらで支えるキャディには「3つのアップが求められる」という話を、みなさんはご存じですか?私はその話を、アメリカツアーでバッグを担ぐプロキャディたちから教わりました。
3つのアップとは、「show up、keep up、shut up」の3つ。「Show up」は、試合の場に、間違いなく、時間通りに、きっちりやってくるべし、ちゃんと姿を現すべしという意味。「Keep up」は、ボスである選手に、ちゃんと付いていくべしという意味。そして「shut up」は、余計なことは言わず、口を慎むべしという意味です。
いわば、この3つのアップは、「キャディたるものの3つの心得」みたいなものです。しかし、この「3つのアップ」を選手が口にするときは、ちょっと注意が必要です。
謙遜の言葉が批判の的になったC.T.パン

台湾出身のC.T.パンという選手は、あるとき、アメリカツアーの試合会場でいいキャディが見つけられず、自分の妻にバッグを担いでもらうことにしました。プロキャディではない妻はキャディ業は不慣れでしたが、逆にパンのゴルフは絶好調となり、優勝争いに絡み始めました。
その3日目。テレビのインタビューで「ワイフのキャディ、どうですか?」と問われたパンは、「いやいや、ウチの妻は別に役に立ってるわけじゃない。ただ3つのアップを守ってるだけですよ」と答えました。
パンはアジア人らしく自分の身内のことを謙遜しようとして、そう答えたそうです。しかし、視聴者からは「キャディをバカにしている」「妻への侮辱だ」などと批判が殺到してしまいました。
口は災いのもと。「shut up」はキャディのみならず選手にとっても教訓になりました。そして、私たちにとっても、ときには人生の教訓となるのかもしれません。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)