◆国内女子プロツアー<NEC軽井沢72ゴルフトーナメント 8月12日~8月14日 軽井沢72ゴルフ北コース(長野県) 6679ヤード・パー72>
岩井ツインズの妹、岩井千怜が、ルーキーとして一番乗りのツアー優勝を飾った。軽井沢72ゴルフトーナメント最終日に、通算10アンダーの首位タイで臨んだ岩井は、混戦状態からバックナインに入って抜け出し、通算14アンダー。同じく首位でスタートした吉本ひかるをはじめとする6人に1打差をつけてのツアー初優勝。この日4つスコアを落として通算1アンダー53位タイに終わった姉の明愛とともに、歓喜の涙を流した。
「努力してきてよかった」岩井千怜が涙の初優勝
笑顔を絶やすことなくプレーしていた岩井千怜の表情が歪んだ。初優勝が決まり、キャディーに祝福された瞬間だ。
双子の姉妹プロとして期待を受けてプロ入りしながら明愛と共にQTに失敗。千怜は90位という順位で、シーズン序盤は主催者推薦などの限られた試合でしかプレーできなかった。
その中で、ヨネックスレディスでの2位タイなどが効いて、リランキング33位でつかんだ中盤戦の出場権。それを生かして手にした初優勝に、「苦しいことがあったけど、努力してきてよかったな、報われたなというふうに思って、たぶん泣いたんだと思います」と感慨深げに語った。
埼玉栄高校3年の弟・光太さんらと共に、先にプレーを終え応援していた明愛も、すぐそばでその姿を見守り、自分のことのように涙を流していた。共に育った2人にしかわからない思いがあふれた歓喜のシーンだ。
焦らず自分のゴルフを徹底!マイペースで手にした初優勝
今年の大会は特に激戦だった。
例年、バーディー合戦となるコースだけに、先にスタートした選手たちがどんどん追い上げてくる。最終組の3人の中でも、吉本ひかる、堀琴音に先行されたが、岩井は慌てなかった。
「今日は目標スコアを4つ伸ばそうと考えていて、周りがバーディーを取って伸ばしても、とりあえず自分のペースで行こうと思っていたので焦りとかはなかったです」と、ルーキーらしからぬ落ち着きぶり。クルクルと首位が入れ替わる展開にも振り回されることはなかった。
流れが変わったのは10番、11番の連続バーディー。
「よっしゃぁ!、来たぁ!という感じで、ここからが本番だ!みたいなやる気に満ちあふれていました」と、積極的なプレーを続けた。
13番パー5のバーディーで抜け出した後もその手は緩めない。QTで守りに入ってうまくいかなかった経験が、攻めのゴルフを生み出していた。
18番は短いパーパットを外してボギーにしたものの、一緒に回る2人がパーで終わったことで、勝利が決まった。
リーダーズボードはほとんど見なかった。
「自分がどの位置で回っていたとかもあまりわからなかったですし、2位とどれくらいとか、トップとどれくらいとかも全然気にしないでやってました」と、徹底的に自分のプレーに集中した。18番のセカンドショットを打った後、ようやく自分が2打差で首位に立っていることを知ったほどだった。
コロナでプロ入りが遅れても自分を磨き続けた
埼玉栄高校在学中の2020年に、岩井姉妹はプロテストを受験するはずだった。だが、それが新型コロナウイルス感染拡大で延期。最初はいつになるかもわからない状況だった。結局、翌2021年6月に行われたのだが、2人は4月に武蔵丘短大に進学。勉強を続けながらプロテストを受験した。
コロナと、それに振り回されるツアーの姿勢の影響をもろに受けた格好だが、それでもやるべきことをやって、プロテストには揃って合格。ステップアップツアーでも優勝するなど順風満帆に見えたが、年末のQTに落とし穴が待っていた。
千怜は90位、明愛は70位と、どちらも序盤戦に出るには苦しい順位。幸い、アマチュア時代の実力を知る主催者の推薦でそれなりに試合に出場することができ、リランキング上位に入って優勝につなげることができた。
途中から明愛が応援にかけつけてくれたことにも気づかないほど集中していた。
双子ということで常に比較され続けているが、互いに刺激し合うことが強さの秘訣にもなっている。
「それ(比較されること)がお互いの刺激になっているので、どっちかが上位で戦っているとうれしい気持ちもありますけど、自分も負けないようにもっと頑張ろうと思わせてくれるような存在なので、これからも今までと変わらず2人で頑張っていきたいと思います」と力強く語った。
ステップアップツアーでは、プロテストから間もないカストロールレディスで千怜がまず優勝。2週間後に行われた次の試合、山陽新聞レディースカップで明愛が勝って続くという双子ならではの影響力を見せた岩井ツインズ。明愛の初優勝、そして姉妹での優勝争いと、夢は広がり続ける。