◆海外女子 <全米女子アマチュア選手権 8月4日~8月7日 チェンバーズベイGC(米ワシントン州) 6541ヤード・パー73>
17歳の馬場咲希が、全米女子アマチュアゴルフ選手権で優勝した。米国ワシントン州のチェンバーズベイGCで行われた決勝(現地14日)で、馬場はチャン・モネ(カナダ)と対戦。36ホールのマッチプレーは馬場が11アンド9で圧勝した。日本人の全米女子アマ優勝は、1985年の服部道子以来2人目の快挙。
37年ぶりの快挙に「本当にハッピー!」
相手に付け入るスキを全く与えなかった。
ミシガン大に通う21歳のチャンが、ボギーを叩いたパー5の1ホール目を静かにパーで滑り出し、まずは1アップ。3ホール目でバーディーを取って2アップとすると、ここから3連続バーディー。
9ホールを終えて5アップの強さを見せた。勢いは止まらず、18ホールを終えた時点で7アップとした。身長175センチから繰り出す「平均270ヤード」の飛距離を武器に、7バーディー、ノーボギーのプレーで相手を圧倒した。
約2時間30分後に行われたアフタヌーンマッチでは、20ホール目のモネのバーディーと、21ホール目にして初めてのボギーで5アップに差を縮められたが、22ホール目のパー5でバーディーを奪い、すぐに流れを引き戻す。
ここから、この日2回目の3連続バーディーで8アップ。25ホール目にモネがボギーで9アップとなった。馬場はそれでも攻撃の手を緩めない。26ホール目のパー5でバーディーを奪うと、27ホール目もバーディーで11アップとして、9ホールを残して決着がついた。
11アンド9の圧勝。7アンド6でヘイリー・シューメーカーを破った準決勝の時と同様に、「ラウンド中はずっと『勝つんだ、勝つんだ』と考えていました」と振り返った馬場。その言葉通りの積極的なゴルフで、マッチを完全に掌握した。
日本人として2人目の大会制覇に、「服部道子さんと並んで私の名前が書かれるなんて本当にハッピー」と笑った馬場。
決勝進出の時点ですでに手にしていた来年の全米女子オープンの舞台はペブルビーチGL(カリフォルニア州)。男子ツアーの舞台でもあるコースで馬場がプレーする様が、今から目に浮かぶ。
全米女子オープン、全米ガールズジュニアでの経験を糧に!
日本ウェルネス高校2年の馬場は、今年、全米女子オープン、全米ガールズジュニアにも出場している。日本の房総CCで行われた最終予選を経て臨んだ全米女子オープン(パインニードルズ)では予選を通過。4日間プレーして49位タイとなっている。
全米ガールズジュニアでは、ストロークプレーのメダリストとなり、マッチプレーでは1回戦を6アンド4で勝利。残念ながら2回戦で敗れているが、今大会につながる経験をした。
昨年までは目立った成績がなかった馬場だが、2022年に大きく開花するシーズンとなった。今後の様々な可能性に、本人も周囲も大きな期待を寄せている。
今大会には、馬場以外にも3人の日本勢が出場しており、全員が36ホールのストロークプレーで64位以内に入ってマッチプレーに進出した。
昨年、オーガスタ女子アマに優勝した梶谷翼と長谷川せらは1回戦で敗れたが、麗澤高校2年の伊藤二花は2回戦に進出。残念ながら5アンド4で敗退したが、しっかりと足跡は残した。伊藤は、馬場と同じく日本で行われた最終予選を勝ち抜き、今年の全米女子オープンにも出場している。大舞台での経験は、アマチュア最高峰を決める戦いでも生きたようだ。
服部道子にとって人生のターニングポイントになった全米女子アマ優勝
日本人として初めて全米女子アマの優勝者となった服部道子は、1984年に15歳9か月の史上最年少(当時)で日本アマに優勝。3か月後には日本代表として世界アマに出場し、個人戦9位の資格で翌1985年の大舞台に立った。大会前には日本女子アマを連覇しており、実力を示しての出場だった。
全米ガールズジュニアと2週続けての参戦となった服部は、前年に準優勝したガールズジュニアでは2回戦負け。不安を抱えながらの出場になった全米女子アマだったが、その不安は一転、ストロークプレーでは単独ではないもののメダリスト(1位)となり、マッチプレーへ進出した。
マッチプレーも順調に勝ち進み、決勝は夢中でプレーするうちに5アンド4の大勝。現在のようにジュニアゴルファーがたくさんいる時代ではなく、ましてや日本以外での活躍など考えられない頃のビッグニュースとなった。
これをきっかけに高校卒業後は、テキサス大学オースティン校に留学。ゴルフ部で大活躍してからプロになった服部にとって、大切なターニングポイントとなった一戦が全米女子アマだった。
時代は変わり、ジュニアゴルファーも増え、活躍できる舞台は大きく広がった。その分、フィールドは厚くなり、結果を出すことは難しくなったともいえるが、馬場は服部以上の大差で全米女子アマを制した。
この先、どこを舞台に暴れまわるようになるのか。進路についてもうれしい悩みが増えそうだ。