◆国内女子プロツアー<日本女子プロゴルフ選手権大会コニカミノルタ杯 9月8日~9月11日 城陽カントリー倶楽部(京都府) 6555ヤード・パー72>
猛チャージのルーキーが、激戦を制した。
第55回日本女子プロゴルフ選手権大会コニカミノルタ杯最終日は、首位スタートの山下美夢有、同じ最終組の森田遥、1組前でプレーする川崎春花、2組前の菅沼菜々による大激戦となった。ここから抜け出したのが、バックナインでバーディーラッシュを演じたルーキーの川﨑春花だった。
1イーグル、6バーディーの64で回った川﨑は、2位の山下に3打差をつける通算16アンダーで優勝。ツアー11試合目、プロとしては国内メジャー2試合目での勝利は、大会史上最年少の19歳133日目での快挙となった。
最大の難関18番ホールを圧巻のバーディ締め
右こぶしを握って2回、ガッツポーズをして見せる。
8メートルの長いパットを、ど真ん中から沈めるバーディーフィニッシュ。笑顔を弾けさせた。追って来る山下、森田を突き放し、最終組を待たずに勝利を決めて、「全然信じられないです。ホント、うれしいです」と、地元京都のギャラリーの前で歓喜した。
自宅から車で約40分の城陽CCは、昨年11月にプロテストに合格した思い出の地でもある。
テスト2日目には、スコアを崩して練習場で泣いた経験もある。約10か月前のことだ。プロ入り後、初めての京都での試合でもあり、「気持ちが入っています」と、初日から意気込んでいた。
中学時代の恩師や友人、両親の関係者など、たくさんの応援に最高の形で応えた初優勝。ビッグタイトルを手にしたが、涙とは無縁。
理由は、「信じられない気持ちがあって」というルーキーらしいものだった。
「最後まであきらめない気持ち」で怒涛の猛チャージ
怒涛の快進撃は、8番のイーグルから始まった。残り120ヤードをPWで、「若干ダフりました」と打ち明けたショットがカップイン。通算10アンダーにスコアを伸ばす。「入ると思っていなかったのでびっくりしました」という会心の一撃だった。
バックナインに入ると、12番パー5で80センチを沈めたのを皮切りに、13番で2.5メートル、14番で1.5メートル、15番では5メートルを入れて4連続バーディー。気が付けば、最終組の山下、森田を抜いて、単独首位に立っていた。
リーダーボードをしっかりと見て「(順位は)把握していました」と言いながら、「目の前の1打に必死だったんで、緊張はあまりなかった」と振り返る。
終盤も冴えたショットを連発。17番で左1.5メートルにつけてバーディーを奪うと、最終18番では左上8メートルをど真ん中からブチ込んで連続バーディー。通算16アンダーで他の追随を許さない鮮やかな優勝だった。
17番でバーディーチャンスについた時、「入れたら、もしかしたら」と優勝を初めて意識したと言うが、それでも自分のプレーを徹底した。メンタルの強さについて尋ねられ、「弱いと思います」と苦笑したが、そうは思えないプレーぶりだった。
「今日はとにかく最後まであきらめない、と思って」という気持ちが、イーグルからの猛チャージにつながった。
ステップアップツアー優勝の自信がビッグタイトルにつながった
2003年5月生まれの19歳。7歳でゴルフを始め、2014年には京都府小学生ゴルフ冬季大会で優勝している。立命館中学時代の2017年には、IMGアカデミー世界ジュニアゴルフ選手権フロリダチャレンジ14歳以下女子の部日本予選で優勝。本戦では4位に入っている。
大阪学院大学付属高校進学後には、2020年度全国高校ゴルフ選手権春季大会で優勝。翌2021年日本女子オープンでは11位タイと力を示し、11月に行われた2021年度プロテストに12位タイで合格した。
しかしQTは65位、リランキングも62位と今一つで、出場できる試合は限られていた。これまで10試合に出場して予選落ちが6回。ベストフィニッシュは、リゾートトラストレディスの29位タイだった。
地元開催の今大会への出場は、7月に関東、関西の2会場で行われた予選会を5位(関西)で突破して決めた。以来、着々と準備を整えた。同時に、下部ツアーのステップアップでは2位2回の後、8月末の山陰ご縁むす美レディスで優勝している。
「腰が痛くなってしまって改善するためにスイングを替えました。それでステップ(アップツアーの優勝)まではネガティブになってしまっていました」とも打ち明けている。
だが、ステップアップツアーで結果が出たことで自信をつけて臨んだ大一番で、見事大金星を挙げた。
予選会から本戦に出場して優勝した選手は史上初。地元開催での優勝も大会史上初と、様々な記録を樹立する優勝劇。ツアーにまた、新しいヒロインが誕生した。