日本人として37年ぶりに全米女子アマを制した馬場咲希。今週の住友生命Vitalityレディス東海クラシックは凱旋試合になる。その馬場を今春からスポンサードしているのが、名古屋市にある企業、リンガフランカサービスである。馬場のプレーに強い印象を受け、ブレイク前から彼女の活動をサポートしているリンガフランカサービスの岳田幸成社長に、馬場をサポートするに至ったいきさつなどをお聞きした。
トーナメント会場で見た馬場咲希の輝きに魅了された
リンガフランカサービスは名古屋に本社を置く、主にブライダル関連の映像、写真、ギフト、ドローン、美容を手掛けている企業。「弊社はブライダル関連、美容系もやっていて半分以上が女性社員ですから、女性が働きやすい会社を目指しています」と岳田社長は語ってから、こう続けた。
「ここから大きくなっていって、社会的に貢献できる会社になるには女性の力が必要。もちろん男性社員が頑張らなくていい、ということにはなりませんが、女性の起用と、支援に力を入れている会社であることは間違いありません」。
そのため、女性のスポーツやイベントへの支援も積極的に行ってきた。女子サッカーのなでしこリーグ1部・ラブリッジ名古屋とシルバーパートナーの契約も結んだり、ミスユニバースのスポンサーになったりもしていた。
女子プロゴルフとの接点は、渋野日向子、稲見萌寧、キム・ハヌルなどのバッグを担いできた古賀雄二プロキャディーとスポンサー契約を結んだことだった。
「ここ1、2年は女子プロゴルファーでスポンサードできる子はいないかな、と探していたんですが、ウチの企業イメージと合い、ご縁がある方がなかなかいなかったんです。そんな折(2022年春)に、名古屋からも近いヤマハレディースオープン葛城が行われていた葛城GC山名コースに出かけて、馬場選手のプレーを見たんです」(岳田社長)。
企業イメージと一致した馬場のプレー
その時の衝撃を、岳田社長はこう、振り返る。
「多くの選手が左方向の安全なルートを選択していくのに、馬場選手だけは躊躇せずに谷越えの最短ルートを狙っていきました。私も葛城をプレーした経験がありましたので、そのプレーに強い印象を受けました。それでホールアウト後、馬場選手のお父さん(哲也さん)にお声がけして、スポンサー契約を申し出たんです」。
馬場サイドにとっても、渡りに船のタイミングといえた。今年の1月1日からアマチュアゴルファーの置かれた立場が、劇的に変化したからだ。
R&Aより新しいアマチュア資格規則が発表され、競技費用を受け取ることやスポンサーやエージェントとの契約を結ぶこと、氏名・肖像を宣伝・広告に利用することができるようになった。
馬場選手のような有能な選手には、多くのスポンサーがつき、遠征費用などのサポートを受けることが可能になったわけだ。
「アマチュアの方々が大変なのは知っていましたが、支援してはいけないと思っていました。でも規定が変わったのを知って、ほぼ同じタイミングで馬場さんが海外に行きたいという話を聞きました。お金もかかるし大変だろうなと思って、何とか支えられないかな、と思いました」(岳田社長)。
それはもちろん、馬場がこれから、さらに成長していくだろうという確信にも裏打ちされた決断だった。
「取引を大きくするとか、商品を売りたいとかという意図なら、アマチュアゴルファーには手を出せない。うちは23歳から27歳の女性社員が一番多いんです。馬場さんにはうちの会社の指針となっていただき、ともにシンデレラストーリーを歩み、成長していきたいというのが本音です」。
馬場とリンガフランカサービスが契約を結んだのは今年の4月。その後、全米女子オープンで予選を通過、さらに全米女子アマで優勝と一気に成長を証明した。会社も同じように成長していく。両者の良好な関係が、今後も続いていくことは間違いなさそうだ。
文/小川 朗(日本ゴルフジャーナリスト協会会長)