◆国内女子プロツアー<住友生命Vitalityレディス東海クラシック 9月16日~9月18日 新南愛知カントリークラブ美浜コース(愛知県) 6502ヤード・パー72>
女子ツアーに、またひとり10代のチャンピオンが生まれた。
住友生命Vitalityレディス東海クラシック最終日(18日)は、大雨で2時間5分の中断をはさみ、台風の影響の風が吹く中で激戦が展開された。最終ホールのバーディーで激戦に決着をつけたのが、19歳のルーキー、尾関彩美悠。渋野日向子の母校でもある岡山の作陽高校在学中の昨年に日本女子アマを制し、11月のプロテストに合格したばかりの新鋭が、アグレッシブなゴルフで勝利を手にした。尾関と最後まで優勝を争った吉田優利は、18番のバーディーパットが決められず、2位に泣いた。
「緊張はしなかった」19歳のルーキー、尾関彩美悠の強心臓
1メートル強のウィニングパットを沈めた瞬間、右手のこぶしを握り締めてガッツポーズ。そこから一転して満面の笑みがこぼれた。
最後は、同じ最終組の吉田との一騎打ちとなったが、「緊張はしなかったですね。(ドキドキとかは?)え~、ないです」と言い切る強心臓。2位に1打差の単独首位でスタートした尾関は、10番、11番の連続ボギーで、一時は吉田に3打差をつけられ、追う立場に変わった。
12番で4メートルを決めてバーディーを奪うと、ここからエンジンがかかる。15番のパー5で3メートル、16番では7メートルを沈めて吉田と互いに一歩も譲らない。通算12アンダーで並んで最終ホールを迎えた。
ティーショットは左ラフ。フェアウェーに落とした吉田が先に2打目を打って、手前3メートルのチャンスにつける。
グリーン周りから響く喝采をものともせず、残り118ヤードをPWで打った尾関のショットは、右1メートル強と吉田よりカップの近くに止まった。
吉田のバーディーパットが外れた後、落ち着いて打ったバーディーパットがカップに消えて、初優勝が決まった。
同期・川﨑春花の優勝が刺激に!
尾関は日本女子アマに優勝後、同年11月のプロテストにトップ合格。QTは58位と今一つだったが、リゾートトラストレディス5位タイ、宮里藍サントリーレディス8位タイと2試合続けてトップ10入り。リランキング28位で、シーズン中盤戦の出場機会を得た。
2週前のゴルフ5レディスで7位タイの後の国内メジャー・日本女子プロゴルフ選手権は29位タイだったが、ここで強烈な出来事に背中を押された。同期の川﨑春花の優勝だ。
「刺激になりましたね。しかもメジャー(公式戦)ですし、すごいなと思って、自分も頑張らなければと思いました。今週は特に優勝を目指して頑張ったと思います」と、気合十分で臨んだ大会で、見事に結果を出した。
「賞金女王になりたいと小さいときから言っていて、海外などでプレーもしたいとは思いますが、今は賞金女王になりたいという夢の方が大きいです」と、口にする。
今シーズンからツアーのシステムが変わったため、「メルセデスランキングの年間女王か?」と聞き返されて、「はい、そうです」というルーキーの夢は、日本で頂点を極めて世界に羽ばたくというものだ。そのための大きな一歩を成し遂げたこの日は、終始、涙ではなく笑顔で喜びに浸っていた。
堂々たる優勝を、敗れた吉田もこんな風に称賛した。「細く見えても私より飛ばしてくるホールもありますし、すごくアグレッシブ。パターもしっかり打ちますし、そういうところがいいゴルフにつながっているのかな」
今後が楽しみな、怖いもの知らずの19歳が、ツアーで暴れ始める。
ルーキーに優勝をさらわれ悔し涙の吉田優利
あふれる涙が止まらない。
最終ホールでバーディーを逃し、目の前で尾関に優勝をさらわれた吉田は、悔しさを隠さなかった。
1打ビハインドで臨んだ最終日。11番で2つ目のバーディーを取り、通算12アンダーとした直後には、3打差の単独首位に立つ。
だが、すぐに盛り返した尾関、前の組で追い上げる後藤美有とのし烈な優勝争いになだれ込む。
12アンダーで尾関と並んだまま迎えた最終ホールも、手前3メートルのチャンスにつけたが、これがカップの左をすり抜けてしまって天を仰いだ。
「回転もまっすぐで、いいところに打ってたのがちょっと切れちゃいましたね」と、最後のパットを振り返り、唇をかむ。
あと一歩のところで逃したツアー3勝目。「やっぱりバックナインでボギーを打ってる(14番)のは、優勝争いしてる中で致命的なミスだと思います。でも、1日を通して見ればいいプレーの方が多かったので、ミスをするタイミングだったりとか、流れをつかむ1打というのをつかんでいたつもりだったんですけど‥。結果がこうなので、つかみ切れてなかったのかな、と思います」と、下を向く。
次週以降に向けては、「(優勝争いをしたような内容のゴルフを)続けるのも大事ですし、何か1つ進化できるように、何かを取り入れるのもありかな、とは考えなきゃと思いました」と、改めて今後を考えることをほのめかした。
敗戦を糧にして進む次のステップ。一回り大きくなるために、吉田はとまらない涙を必死に振り払った。