◆国内女子プロツアー<JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ 11月24日~11月27日 宮崎カントリークラブ(宮崎県)6487ヤード・パー72>
山下美夢有が激戦の末、JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップで優勝し、年間女王の強さを見せつけた。
27日に行われた最終戦は、猛チャージをかけた勝みなみが通算15アンダーで山下に追いつき、プレーオフにもつれ込んだ。だが、1ホール目で山下が渾身のバーディーを奪って今季5勝目。平均ストロークを69.9714として日本人として初めて70を切った。パーオン率も稲見萌寧を抜くNo.1となり、ツアー最強らしいフィナーレを飾った。
「目の前の1打に集中できました」初のプレーオフでバーディーフィニッシュ
奥から8メートルのバーディーパット。下りのフックラインを鮮やかに沈め、山下の勝利が決まった。
「最初(正規)の18番とほぼ同じライン。結構切れると思っていたので、深めに読んで打ちました」
読みはピタリと当たり、すでにバーディーパットを外している勝を下した。「ホントに最終戦で優勝目指してやっていたので、優勝できてうれしいです」と、素直な気持ちを吐露したが、実は山下自身プレーオフで戦うのは初めてだった。
「緊張したけど、目の前の1打に集中できました。リズムだけ意識してやりました」と、いうプレーオフ。本戦では奥からの10メートルを2パットのパーにしたが、同じラインにつけたことで勝利を呼び込んだ。
勝の猛攻は、15番でリーダーボードを見て知った。「落ち着いて自分のプレーをすればいい」とキャディと話し、そのとおりにした。
15番は3パットのボギーだったが、それでもマイペース。大きな歓声を聞いても動揺しなかった。
3組前で回っていた勝が、18番で長いパットを沈めて山下に並んでホールアウトした時だった。
「(歓声が)すごかったので、バーディーだなと思いました」と言いながらも自分のプレーに集中し、残り3ホールでパーを重ねて、勝との決戦に挑んだ末の勝利だった。
来年に向けて自らに課す厳しい“ノルマ”
2週前の伊藤園レディスで、すでにメルセデスランキングNo.1の年間女王は決めていたが、この試合には大きな記録がかかっていた。
通算12アンダーよりいいスコアで回れば、年間の平均ストロークが70を切る。2019年に申ジエが70を切っているが、日本勢ではこれまで達成した者はいない。3日目ですでに通算13アンダーになってはいたが、それよりも「伸ばし合いになる」と意識したのは優勝争いだった。
3番でボギーが先行し、苦しい展開となったが、6番、7番の連続バーディーで盛り返し。10番ではカラーから10メートルを沈めた、13番でも3メートルのバーディーを奪ったが、15番で3パットボギー。楽な戦いではなかった。
それでも、山下は持ち前のマイペースでプレー。結果的に平均ストロークでも稲見萌寧を逆転し、No.1となった。
「目標を全部達成できたいい1年だったと思います。来年も同じようなプレーをしていきたいなと思います。これ(この記録)を抜きたいと思います」と、自らに厳しい“ノルマ”を課した。
「人間性も成長したい」新女王が目指すプロとしての姿
表彰式で口にしたのは「人間性も成長したい」と言う言葉。
この裏には、小学生の頃に見ていた宮里藍の姿がある。「ファンへの対応とかそういうのを見て、ゴルフもすごいけど人としてすごいなと思っていた」。
そこを目指して、「これからプロを目指す子供たちに尊敬される選手になりたいです。今まで通りやって行こうと思います」と、初心を貫くつもりでいる。
コーチである父に、毎週、微調整してもらうなど、家族のサポートにも感謝の言葉を口にし、あくまでも謙虚な新女王。海外への気持ちも、これまで以上に高まり、「海外の試合で優勝したいなと思います」という大きな夢も飛び出した。
表彰式で仲間たちに囲まれ、真っ赤なフラワーシャワーの中心で誇らしげに、それでいて少しはにかんだ山下は、来年もまた、これまで通りコツコツと自分の道を行くに違いない。