どれだけ才能や実績がある選手でも、それをずっと続けるということは不可能なことです。逆に、スランプに陥ってしまった選手が、ちょっとしたことで調子を取り戻すこともあります。今回は、調子を崩した選手たちが、復活のきっかけをつかんだときのお話です。
プロゴルファーは孤独だからこそスランプに陥りやすい
アメリカ女子ツアーの2022年の初戦『トーナメント・オブ・チャンピオンズ』を制したダニエル・カンは、セレブ部門に出場していた元女王アニカ・ソレンスタムが嬉々としてプレーする様子を見て、「何か」を感じ取り、そうしたら、この1年半ほどの悩みが、どこかへ吹っ飛んで、見事、2年ぶりの復活優勝を遂げることができたと振り返っていました。
その翌週、今度は第2戦の『ゲインブリッジLPGA』で、ニュージーランドのリディア・コーが勝利を挙げ、通算17勝目を達成しました。
コーと言えば、かつては天才少女として世界的な注目を浴び、17歳で世界ナンバー1に輝いた選手ですが、2018年以後はスランプに陥っていました。
2021年は、4月の『ロッテ選手権』で復活優勝を果たし、東京オリンピックでは銅メダルを獲得。しかし、それでも彼女は、どこかしっくりしない感覚を抱いていたそうですが、その違和感を払拭してくれたのは、男子選手のジョン・ラームの言葉だったそうです。
ゴルフはミスをするスポーツ
「僕の父はいつも言っていた。モノゴトは必ずしも思い通りにはいかないものだ。そしてゴルフはミスのゲームだ。ミスから、どう立ち直るかの戦いなんだってね」
この言葉は、ラームがアメリカ男子ツアーの『ファーマーズ・インシュアランス・オープン』開幕前に、地元のジュニアゴルファーに寄せたメッセージだったのですが、巡り巡って、彼の言葉をSNS上で偶然発見したコーは、「そうか」「なるほど」と感じたそうです。
「私はときどき完璧を求めすぎて、すべてをコントロールしようとしすぎていた。ミスしてもいい、そこから立ち直ればいい。そう考えたら楽になった。そうしたら優勝できた」と、コーは明かしていました。
苦悩からの脱却は、案外、ちょっとしたことがヒントになります。いやいや、そのヒントを敏感に感じ取って活かすことができるからこそ、彼女たちは強いと言うべきなのでしょう。それは、ゴルフのみならず、私たちの仕事や人生にも、当てはまりそうな気がします。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)